complete
~快斗side~
俺の名前は黒羽快斗。
あいつの名前は工藤新一。
あいつって誰かって?
あいつは俺の・・・・・・・・片思いしてる恋人。
俺は2代目怪盗KID。
新一に初めて会ったのはKIDの姿だった。
新一は俺の計画をことごとく崩してくる名探偵だ。
厄介な相手だとおもっていたけど、いつしか俺は楽しんでいた。
どんな風に攻めるか、どんな風に攻めてくるのか、
本来の目的を忘れるんじゃないかと思うほど、新一とのやり取りに夢中になっていた。
唯一認めた探偵。俺のライバル。
だが、ある日俺は快斗の姿で新一と出会った。
それは本当に偶然のことで、大学が一緒だった。
下手に近づくのは危険だと思って、ずっと距離を置いていたが、
俺は気づいたらずっと新一を目で追ってしまっていた。
新一はいつも真っ直ぐで、裏表がなくて、無茶ばっかりしてて…
ほっとけないという想いはKIDとして出会った時から常にあったが、
大学で出会って、取り囲む友人たちと親しそうに話している姿や、
真剣に授業を受けている姿、事件が入ったのか目を輝かせながら授業を抜けていく姿。
そんな色々な姿を見ていくうちにいつの間にか俺は新一に恋をしていた。
この感情を抑えるのに必死になっているとき、俺は新一に告白された。
といっても俺はその時KIDの衣装を着ていた。
でも、俺は舞い上がってしまい、その告白に応えてしまった。
すぐに後悔したのだが、俺の返事を聞いた時の新一の顔が忘れられなかった。
恋したのは快斗なのに、KIDが恋人。
俺は失恋をしたのだろうか…
それから俺は快斗としても新一に近づいた。
リスクはあったが、我慢出来なかった。
新一にKIDではなく俺を見てほしかった。
KIDは俺じゃないなんて思わないけど、黒羽快斗を知ってほしかった。
「初めまして俺、黒羽快斗よろしく新一。」
初めて声をかけたあの時、新一は俺の勢いに吃驚してたみたいだけど、
それからの日々はあっという間で俺と新一の関係は親友になっていた。
俺を知ってほしい。
その願いは叶ったわけだが、何一つ満たされた気はしなかった。
KIDの予告状を出した日の新一の嬉しそうな顔。
次の日の幸せだけど寂しそうな顔。
その顔をさせているのが俺であって俺じゃないKIDだということが悔しくて悔しくて仕方がなかった。
その悔しさからKIDの姿で新一に冷たい態度をとることもあった。
我ながら最悪な奴だと思う。なんて汚いことをするんだと…
でも、新一は悲しげに笑いながらも許してくれた。
KIDと会うときの新一はいつも笑っている。
恋人らしいことをするわけでもなく、短い限られた時間にたわいない会話をするだけ。
それでも、盗み見る新一の顔はKIDにしか見せない顔。
少し照れて幸せそうな顔。
なぁその顔は「俺」のもの?
いつものごとく大学が終わり、二人並んで新一の家に帰ってきた。
俺が夕飯を作り、新一はソファで読書。
このゆるやかに流れる時間がたまらなく好き。
でも、その穏やかな時間をぶち壊したくなった。
新一の心を掻き乱してやりたい。
全てを知っててこんな質問するなんて単なる八つ当たり、そんなことは百も承知してる。
でももう止められない。
「新一って恋人居るの?」