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俺の質問に新一はひどく驚いた顔をした。
当然のことだと思う。
だが、俺は確かにひどい質問をしているが、友人としてはいたって普通の質問だ。
掻き乱してやりたいと思い言ったことなのに、
必死に正当化しようと言い訳を考えている自分に苦笑する。


「…新一、どうかした?」

「あっいや、何でもねぇよ。」

「そう? で、新一は恋人居るの?」

『恋人』という言い方をしたのもあえてだ。
きっと『彼女いるの?』と聞いてしまったら、『居ない』で終わってしまうから。
だってKIDは『彼女』じゃない。

「黒羽はどうなんだ?」

「俺が先に聞いたの。」

「…」

「俺には言えない?」

「いや、別に…」

「じゃあ、教えて。恋人居る?」

「ってかなんでいきなりそういう話になんだよ。」

「俺が気になったから。」

「なんで。」

「親友だから。」


卑怯だ。分かってる。
全部知ってるくせに、言葉にさせようとして。
本当は親友なんて思ってないのに『親友』という単語を使って脅す。
これを言えば新一が絶対に言うだろう確信があったから。

でも、言った後で後悔した。
掻き乱したかった。確かに困らせたかった。
でも、実際に新一のそんな困った顔を見たら…

(俺は馬鹿だ…)

本当はKIDに見せるあの顔が見たいくせに…
掻き乱してやりたいなんて本心じゃないくせに…
どうせこの質問だって答えを聞きたいわけじゃない。
『KIDが恋人』なんて聞きたくない。




「…やっぱ――

「居るよ。」

「…」

「恋人、居るんだ。」

「…新一、ごめん俺…」

「なんでオメーが謝るんだよ。悪いのは俺だよ、黙ってて悪かったな。」

「そんなことない…。」


結局言わせてしまった。


「驚かないで聞いてくれよ。」

「うん。」


今になってなんだか怖くなる。
答えは分かってることなのに、どうしてか怖かった。
でも、ここでやっぱり話すななんて言えない。
あんな卑怯は言い回しで聞き出したのは自分。
最後まで聞かなきゃ…駄目だよな。


「誰なの?」

俺は『親友』らしく、続きを促した。
普通はわくわくしながら聞くんだろうけど、そこまで演技は出来なかった。
新一の顔は見れなかった。


「あのな、俺の恋人…KIDなんだ。」

「・・・・・・」

俺は言葉を返せなかった。

頭の中で『うっそだぁ』とか『マヂ!!?』とか、
おちゃらけつつ返事をする自分の姿を思い浮かべていたのに。
現実の俺は何も言えなかった。

笑えてくる。
KIDの姿で新一と付き合ってる記憶もちゃんとあるのに。
快斗として新一に言われるとどうしてこうも苦しくなるんだろう。


「…驚くよな。」

「…うん。」


これが精一杯の返事だった。
そして少しの沈黙の後、新一は静かに話し出した。

「俺が告白したんだ。
 いつの間にか好きになってて、
 おかしいよな…本当の姿も、本当の声も、KIDのこと全然知らないのに…
 それに…男同士。気持ち悪いだろ…
 俺は探偵で、あいつは泥棒だってことも…ちゃんとわかってる。
 それでも、好きなんだ。

 諦められなかった…

 全ての謎を解き明かしたいっていう俺が、
 KIDのことは何一つ解けないまま、なんて…
 謎を解くことを望まない、なんて…

 本当にどうかしてるよな。」



新一の声音がすごく優しい。
気持ちが伝わってくる。


俺はそこまでKIDが新一に想われてることが嬉しくて、幸せで、
心臓がドクドクと早くなった。
でもそれと同じくらい快斗の心が悲しんでいた。
心臓がドクドク鳴る度に胸にズキズキと痛みが走った。

ぐちゃぐちゃだ――




「黒羽、俺を軽蔑するか?・・・・・黒羽?」

「・・・・・・・」

「なぁ、黒――」


俺は頬を流れる涙を止めれずにいた。
新一に気づかれても止めれなかった。

胸が痛い。

駄目だ―――



「ごめんっ」

「おいっ黒羽っ!!!」


俺は新一の家から飛び出して、走った。


新一…

ごめん…ごめん――

俺、馬鹿だ――



俺は自分の家に帰り、
玄関の扉を開け中に入ると崩れるように座り込んだ。


作品名:complete 作家名:おこた