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~新一side2~
俺は怖かった。
全てを話したあと、黒羽の態度が変わってしまったらどうしよう。
軽蔑されてしまったらどうしよう。
俺は臆病だから…
でも、気が変わった。
「親友だから。」
どうにか誤魔化せないかと逃げていたけど、黒羽のこの一言で全部話そうと思った。
元々、いつかは話そうと思っていたことだ。
いつかも今も変わらない。
親友にだって秘密があってもおかしくはないと思う。
でも、俺は黒羽には全部話したい。
黒羽には秘密にしていたくない。
黒羽の親友という言葉を信じる。
黒羽を信じる。
だから、黒羽なら大丈夫。
静かに深呼吸したあと、
俺はゆっくり全てを黒羽に話した。
俺が告白したんだ――
おかしいよな――
ちゃんと分かってるんだ――
でも、好きなんだ――
本当にどうかしてるよな――
初め黒羽は何故か謝ってきたが、謝るのはこっちだ。
そして静かに最後まで聞いていてくれたことに心の中で感謝した。
俺はホッとしていた。
(やっと黒羽に話せた…)
でも、ホッとするのも束の間だった。
黒羽の様子がおかしい…
やっぱり軽蔑されてしまったのだろうか…
「黒羽、俺を軽蔑するか?・・・・・黒羽?」
「・・・・・・・」
「なぁ、黒――」
黒羽が…泣いていた。
黒羽が泣くところなんて初めて見た…と思う。
曖昧になってしまう理由が分からなくて混乱していると、黒羽が立ち上がった。
「ごめんっ」
「おいっ黒羽っ!!!」
黒羽はそのまま家を出て行ってしまった。
どうしてか追うことは出来なかった。
黒羽の泣いた横顔が頭から離れなかった。
俺は力なくソファに沈み込んだ。
その日は一睡も出来なかった。
黒羽のことが気になって仕方がなかった。
黒羽はどうして泣いていた?
俺が話さずにいたから?
恋人が男だったから?
恋人が泥棒だったから?
KIDだったから?
どれも嫌う理由にはなっても、
黒羽が泣く理由にはなっていない気がする。
そして一番気になるのが、
俺は以前何処かであの泣いた横顔を見た気がする…
一体いつ?何処で?
俺は大学で初めて黒羽に出会った。
最初から馴れ馴れしい態度で、でも不思議とそれに対して不快感はなかった。
大学で会うときはいつも黒羽は笑っていた。
俺が本を読んでいてそっけなくした時も、
俺が事件に没頭して連絡を全然いれなくても、
すねることはあったけど、泣いたことなんて一度も無い。
家に居ても同じ、長い時間一緒に過ごしてもいつも楽しそうに笑っていた。
じゃあ俺は一体いつ見たっていうんだ。
勘違い?…違う気がする。
ちくしょ・・・・
こういう時…
普通の恋人なら相談とかすんのかな・・・・・
KIDに会いてぇ…
そういえば――
KIDが一度泣いたことがあった――
あれは確か――