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「今日もハズレかよ?」

「はい。」

「残念だったな。」

「…あなたには関係が無いことです。」

「…そうだな。」


KIDの予告状が出て、
俺はいつも通り、逃走ルートでかつ周囲から隠れられるような場所を探して待っていた。

KIDはよく知られたあの純白の衣装を身にまとっていつも表れる。
俺はその瞬間が好きだった。
風に流れるマントが綺麗で、月明かりを背にしたKIDは悔しいぐらいに格好良くて、
鮮やかに一礼した姿に見惚れる。
KIDの表情はモノクルで隠れていて見えなかったが、
いつもその雰囲気で自分と一緒に居る時間を楽しんでいてくれることが分かった。

でも、この日は違った。
いつもは弾む会話も全然続かず、沈黙が多かった。


俺はあえて何も聞かなかった。
言いたいことがあるなら言うだろう、そう思った。
言えないことなら聞いてしまったら困らせる。
聞いてもいいことだとしても、
この日は聞いたところで、『何でもありませんよ』と返ってくる気がした。

俺はたとえ重い沈黙でも、会えたことを嬉しく思った。
KIDにはなかなか会えないから、
会えたその時間を喧嘩で終わらせるようなことはしなくない。

俺は理由が分からないKIDの態度の変化に気づかぬふりをした。


そしてこの日は、
KIDの去り際に俺は珍しくこう言った。


「KID、好きだぜ。」


俺はあまりこういったことを言わないから、KIDは驚いていた。
そして下を向いたので照れたのかと思い、覗き込もうとしたら―



「では、新一…おやすみなさい。」


KIDはポンッという音と共に消えていた。
でも、マントを翻した瞬間に確かに俺は見た。

KIDの泣いた横顔―――


俺はこの時、嬉しくて泣いたのかと思った。




でもそれは違ったんだと今気づいた――

黒羽の泣いた横顔とKIDの泣いた横顔。
今、俺の中でその二つがぴったり一致した。

作品名:complete 作家名:おこた