英雄、ミッドチルダに降臨す3
家康が廃墟ビルの億錠から飛び降りて、両足で綺麗に着地すると、服についてあったフードを被り、戦う準備が整った。
スバルはその姿を見て目を輝かせていた。
「家康さぁーん、準備はいいですかぁー?」
「あぁ! いつでもいいぞ!」
シャーリーはモニターに映っている家康に確認すると、彼は準備万端でいつでも戦闘できるぞと元気な声で答えた。
これには隊長陣もフォワード陣も家康の実力に期待している。
「家康君がどれほどの能力を持っているのか、お手並み拝見、だね」
「家康さん! 頑張れ!」
なのは、フェイト、ヴィータ、シグナム、シャーリーにとってまだ家康の実力派未知数で、スバル達が言った「魔法を使わないでガシェットを倒すほど」の実力を持つということは、家康は魔法が使えないのにもかかわらず、なのは達隊長陣と互角かそれ以上の実力を持っているようだ。だが、未だ知らないまま……
「じゃあ、最初というわけですし、ガシェットドローンⅠ型三十機からいきますね」
シャーリーがそう言うと、空中に映し出されているキーボードを打ち込んで、ガシェットの姿を設定した。
「では、始め!」
シャーリーが高らかに言うが、フェイトはある問題点に気づいた。
「シャーリー! ガシェっとの数、間違ってるよ! 一桁多くなってる!」
「……え?」
「ほら! 数字をよく見て! 『300』になってるよ!」
フェイトの指摘を受けて気づいたシャーリーは慌てふためき、家康に謝罪した。ガシェットの数を訂正しようと、キーボードを打ち込むが、更にガシェットの数が三百から更に一桁多くして三千になってしまい、挙句の果てにはロック機能をかけてしまい、ガシェットを全て壊さない限り戻れないという失態を犯してしまった。
これにはなのは達は驚きを通り越して呆れてしまっていた。
「おい! どうするんだよ三千機って! いくらガシェットを素手で倒した奴でもそれは無理だろ!」
いつの間にか三千機のガシェットが家康を囲み、ヴィータが怒鳴り声を上げて三千機だといくら家康が実力者だとはいえ、それは無理だと言った。
初訓練で三千機とは、無謀すぎるにも程があるだろう。なのは達も不安を募らせ、ガシェットに囲まれている家康を見た。
「どうしよう……すぐに助けに……」
「待て!」
スバルがおどおどしながら家康を助けに行こうとするが、シグナムが遮った。
シグナムの声でスバルの足は止まり、視線を彼女に向ける。
「家康の奴……やる気だぞ……」
「……えっ?」
スバルはきょとんとして視線を家康に戻すと、そこには三千機のガシェットを相手に物怖じせずに拳を構える家康がいた。右腕を後ろまでに下げて拳を光らせし、それから勢いに任せて右腕を前に突き出した。
「はあああああっ!」
拳がガシェットの中心部を貫いて爆破すると、その後から来る風圧がそのガシェットの背後にいた他のガシェット数十機ほど巻き込ませて破壊した。
それが――家康の模擬戦の始まりの合図だった。
作品名:英雄、ミッドチルダに降臨す3 作家名:葉月しおん