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今日のむかつきは特別ひどい。
 きゅっと眉間によった縦皺の原因は、もはや先程の臨也の軽口のせいではない。完全に帝人自身の幼さが理由である。
 どうやっても埋めることが不可能な絶対的なものを前に、理不尽な腹立たしさが止まらないのだ。
 どうしようもないと分かっていながら、今更実感する恋人との差に、決して公にしたくない感情が沸き起こるのを止められない。
 まだ臨也の腹に置いたままの手のひらに触れる皮膚も、帝人とは違う。細身ではあるが、帝人の体重を支えることが難しくない筋肉の固さが確かにある。帝人のひょろりとした体のような、成長途中の青さはどこにも見当たらなかった。
 そんな帝人の痩せっぽちな体を好きだと臨也は囁いていたけれど、仮に貰えるのならば臨也のような体がいい。余分な肉のついていない、しかし、しっかりと引き締まった贔屓目抜きにしても魅力的な体を臨也は持っている。
 胸の中のやりきれない気持ちがどっと膨れて、帝人は感情のまま強く爪を立てた。
 少年の意外な行動に臨也の目が僅かに見開かれたが、耐えられないほどの痛みを感じたわけではないだろう。その証拠に手を離して見ても、臨也のなだらかな皮膚は腹筋に守られかすり傷のひとつもついていなかった。うっすらと赤く爪あとが見えるだけである。一時間もせずに消えるだろう。
 だが、ここに、確かに傷を負った日がある。
 傷はもうすっかり塞がって名残もないほどだが、あの日、確かに臨也は腹部を刺されたのだ。
 そのことを思い出すと、帝人のこころの中は複雑なものでいっぱいになる。
 臨也が刺されたという驚きと、心配。誰に、という疑問。誰が、という怒り。そして、それを許した臨也への憤り。臨也の体に傷がつく。言葉にしたらとても短い事実が帝人の頭を真っ白にした。
 臨也はよく静雄との争いで傷をつくることがあるが、それだって帝人は許せないのだ。静雄さんなら仕方ないですよね、と口では言っても、本音は別。傷を受けるという油断を、誰にも許してはいけない。帝人の細い、貧弱と表現してもいい身体の中は、臨也への独占欲でいっぱいで――溢れそうだ。
 淡く残る三日月の姿を、留め置こうとするように帝人の爪先が再び臨也の皮膚へと潜る。けれど、臨也は帝人の手を払うことなく好きにさせている。青年が息を吸い吐く動きで、なめらかに胸が隆起した。
 こんなふうに臨也が無防備な姿を見せるのは自分の前だけであって欲しい。
 ――こんな思いも、自分だけが臨也に入れ込んでいるのではないかという不安を抱かせる。そしてこの執着がひどく子どもっぽい感情だと帝人は思っているため、また年齢の差を意識してしまうのだ。
 同じ年齢であれば、対等にいられただろうか。互いの思いの重さを天秤にかけたりせず、臨也と付き合うことが出来ただろうか。


作品名:hbi 作家名:ねこだ