二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

みんな誰かの愛しい人(虎兎)

INDEX|2ページ/4ページ|

次のページ前のページ
 

一応と前置きについてしまうのがあれだが、それでも二人はコンビで活動するため、トレーニングの時間も合わせるくらいにはなっていた。ここに来る途中、バーナビーの背中を見かけた虎徹はもちろんご機嫌に声をかけたが、そんな自分に呆れる様子さえ見せることのないバーナビーの体調など押して知るべしだ。いつもなら「うるさいですよ、おじさん」から始まって、それこそいつもの可愛くない態度を見せてくるはずが、無反応。
散々声をかけ、やっと体調が悪いことを認めたが、先ほどと同じく仕事に支障をきたすほどじゃないの一点張り。熱は?薬は?大丈夫なのか?にも放っておいてくださいを繰り返すだけで、バーナビーはこちらを見向きもしない。というより、そんな余裕すらないのだと虎徹はわかり、これ以上かまう方が余計な体力を消耗させると判断した。
いつもヒーローとしての活動を仕事ですからと言い切るバーナビーだが、その仕事と呼ばれることに対して妥協しないし、真摯に取り組もうとするのは傍で見ていて虎徹が一番良く知っている。人に迷惑をかけることを誰より嫌う性格なのも、責任感が強いせいだろう。そこを簡単に仕事なんか休めよとは言えない。ますます意固地になるのは目に見えている。
「まーねぇ、あの子も頑固なことあるから」
「頑固っつうか、素直じゃねぇんだよ、あいつは」
「そーねえ。でもそういうところがね」
「可愛いって言うんだろ」
まさか虎徹からすんなりとその返答が返って来るとは思ってなかったネイサンは、少し拍子抜けした。思ってたより、ずっとこのコンビは相性がいいのかもしれない。
この男のお節介ぶりはネイサンも十分知るところにあるのだが、あんなにお節介を焼きたくなるような子もなかなかいない。しかも本人が強がってみせたりするもんだから、虎徹からしたら心配でたまらないだろう。
「さすがパートナー。わかってるじゃない」
「まったく…たちが悪いぜ」
「またまた。皆がバーナビーのことかまってこうならないように、自分に矛先を向けたかったんでしょ」
「いや、嘘は言ってない。娘と夕食、俺はご機嫌だぜ?」
頭で手を組み、虎徹はトレーニングマシーンに向かう。
「さて、バーナビーの分まで今日は俺がしっかりトレーニングしとくか」
その姿にネイサンはどっちもどっちだと溜息を吐いた。
「素直じゃないのは、あんたもでしょ」
「それで、バーナビーくんは大丈夫なのかい?そうじゃないのかい?」
「え?あ、いたのキング・オブ・ヒーロー」
実に心配そうな表情で、すでにバーナビーがいなくなった後にそんなことを言ってくるスカイハイがいた。

[newpage]



最悪だ。
トレーニングルームを後にしたバーナビーは、言われるまま夕方の生放送の時間まで休むことにした。眠れば少しはマシになるはずだと思い、頭がぼんやりすることは避けたくて薬は飲まなかった。しかし一時疲れがとれたように錯覚しただけで、その後大量の光を浴びながら何台もあるカメラを意識しつつインタビューに答える間にどんどんと体調は悪くなる一方だった。
インタビュアーの女性の顔さえまともに把握出来ないほどだったが、それでも笑顔だけは絶やさずに、お決まりの質問にテープレコーダーを再生するかのようにバーナビーは答える。まるで出来の悪いアンドロイドだ。
生放送が終わった後も、体調が悪いなどと悟られたくない一心で気丈に振る舞い、TV局を後にした。
自分の部屋に帰ってきた時には、ベッドまでたどり着くことも叶わずに冷たいフローリングの床に倒れこんだ。少し休んでからなどと自分に言い聞かせ、真っ暗な部屋で一人苦しくなる息を繰り返す。
散々で最悪な一日だった。
だが、一番最低なのは他でもない自分。
からっぽなだだっ広い部屋の天井を仰ぎ見て、バーナビーは思う。
あれだけ普段、パートナーにお説教まがいのことを言ってきたくせに、自分はこのざまだ。また浅はかなプライドがそれを認めたくなくて、いつものようにトレーニングに向かう自分。もう少し誤魔化せるつもりでいたが、結果自分より年下の女の子に当たる始末。本当に誰にもかまわれたくないと思っているのなら、もっと上手いかわし方だって自分は知っていたはずだ。そうやって、今までだって生きてきたつもりだった。
でも。
「僕は…」
身体が熱くて、沈むようにだるく、もう一歩も動けそうにない。
せめてベッドにと横を向くと、ぽたりと生暖かい液体が伝い、フローリングに小さな水溜りを作るのが見えた。
そのことに、自分自身が一番驚く。
「甘えたんだ…」
あそこへ行けば、皆から心配されるのもわかっていた。まずあのお節介焼きは気付くだろうとわかっていた筈なのだ。かまわれたくなかったのなら行くべきじゃなかったのに、それでもあそこへ行ったのは甘えだった。心配されたかったのかもしれないし、それに対して気丈に振舞えば自分を誤魔化せるんじゃないかと思った。
そういう態度を取っても許されると、自然にバーナビーは心を許していたのだ。けどそれは、相手にしてみれば心を許されたなんて思うようなことじゃない。風邪を理由に自分は傍若無人な態度を取ってしまっただけで、人の心配を受けるだけ受けて、切り捨てた。
「ははっ…馬鹿だな…」
声まで掠れてきて、涙は一向に止まらない。
「何が、僕はずっと一人だ…」
誰も寄せ付けようとしなかったのは他でもない自分だ。一人でも平気だと、ずっと人との関わりをおざなりにしてきたのに、今更甘えるなんて虫が良すぎるじゃないか。
おまけに一人でも平気だなんて、この現状では偉そうに言えたもんじゃない。ヒーローとしても失格だ。今もし、出動要請でもかかったらどうするつもりなんだ。病院に行くことも放棄し、風邪薬を飲むわけでもなく、ベッドにすらたどり着けない。
そして、今出来ることと言えば、冷たい床でただ泣くだけ。
「ベッドに…」
そう思うのに頭は爆発しそうな程がんがんと痛みを与え、熱はこれ以上ないほど自分の身体を重くさせていく。
苦しい。
まるで水の中にいるように呼吸が上手く出来ない。
そのくせ、身体は燃えるように熱い。
熱い。
そう、自分は知っている。
この熱さ。
苦しさ。
この炎によって大事な人を永遠に失うことになるというのに、燃えさかる業火はこの世のものとは思えないほど美しかったのを今でも覚えてる。
あの時も、何も出来ずに自分は泣いていた。
変わってない。
ヒーローになり、本名と素顔を晒し、自分は大人になり復讐を果たす時が来た。
そう思っていたけど。
助けて。
それは今も言葉にすることは出来ないまま。
誰か。
頭の隅でへらへら笑うお節介焼きの顔が浮かんだが、今日ばかりは素直じゃない自分を発揮する他ない。
だって今日は──。

[newpage]



あんなに重たくてどうにもならないと思った身体が、ふわりと浮く感覚がした。
ああ、夢だ、とバーナビーは思ったが、少しずつ身体の痛みを感じ始め、これが現実だとわかった。けれどだったらどうして自分は柔らかいベッドの上にいるのだろう?まさか寝ぼけて意識のないままベッドへいったなんて考えられない。自分の意思でもベッドに行くことすら出来なかったのに。