二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

【腐向け】西ロマ+米SS・5本セット

INDEX|3ページ/8ページ|

次のページ前のページ
 

たちこめる雨雲


「うっさいわ、この眉毛!」
「なんだと、ペド野郎!」
 退屈な世界会議がようやく終わった直後。会議前から口論していたイギリスとスペインが、揉み合いを始めた。夕飯に誘おうと来ていたアメリカとロマーノは、少し離れた場所で完全蚊帳の外。口悪くお互いを罵る二人は、どちらも世界のトップに居た事があるとは思えない品の悪さだった。

「まったくもう! 仕方ないな、あの二人は」
「……仲良いよな」
 溜息をつくアメリカに、ロマーノが眉を潜めて答えた。似たような罵り合いをしている二人は、逆に息が合っているようにも見える。その状況に気付き、アメリカも微妙な顔で頷いた。
 二人の喧嘩の原因が自分達なのは明白で、保護者から恋人に立場がシフトしてもなお過保護過干渉を受けている事を、世界会議が終わったばかりのこの場で発信されているのは死ぬほど恥ずかしい。遠巻きに世界中から見世物にされている状況をなんとかロマーノ達が耐えていると、スペイン達は罵り合いから殴り合いに発展するようだった。
「あん時みたいにボッコボコにしてやる!」
「はあ? やり返したるわ、アホ!」
 綺麗な仕立てのスーツの腕を捲り、じりじりと間合いを測っている。
 恋人がやきもちを焼いてくれる姿はなかなか見られないので嬉しいのだが、一端こちらの友情を育み始めてしまうとうっとうしい事この上ない。焼かれて嬉しかった気持ちは蒼天に消え失せ、過保護過干渉への反発が入道雲のように膨れ上がり、嫉妬にも似た感情が雨雲のように心を暗くさせる。こちらを見て貰えない悲しみは雨となり、ロマーノ達の心を冷やしていった。
「なんで『あの時』で通じるんだか」
「二人だけの思い出みたいでムカつくぞ、コノヤロー」
 殴り合う二人に冷ややかに突っ込む。そんないい思い出では無いのは分かるのだが、お互いにしか伝わらないような言葉で言われるのが腹立たしい。何だちゃんと言えないやましい事でもあるのかと、二人は同時に頬を膨らませた。
 離れた場所でロマーノとアメリカが話してした事に気付いたスペインが、物凄い形相でこちらに走って来る。その勢いに怯えてロマーノがアメリカの背中につい隠れてしまうと、嫉妬心丸出しでスペインが怒った。
「ロマ、アメリカと付き合うのは止めとき! 眉毛が移るわ!!」
 移るかという突っ込みをする間もなく、今度は追いかけて来たイギリスがアメリカに声を荒げる。
「なんだと!? 口の悪さが移るから、アメリカお前が止めとけ!!」
 お前達が二人で話していたせいで手持無沙汰だったからなのに、話すなというのは一体何様なのだろうか。この状況にストレスも怒りもマックスに近いロマーノは、鼻を鳴らして顔を背けた。
「知るか。俺の勝手……なんだぞ☆」
 ちょっとした仕返しに、わざと語尾をアメリカに似せて話すとスペインが無言で固まった。その状況を見てアメリカの目が輝き、さらに笑顔で被せてくる。
「そうそう。くたばれイギリス、コノヤロー!」
 同じように表情を失い固まるイギリスを見て晴れやかに笑うと、ロマーノとアメリカは固く握手を交わした。スペインとイギリスの争いは、結局二人の友情を高めるだけ。お互いに過保護な保護者に苦労すると、より親密度を上げた。

 言葉もない元保護者達を置き去りにして、ロマーノ達は共犯者のように走って会場を後にする。笑いながら走っていると、お腹がすいている事を思い出した。そういえば、恋人を夕飯に誘おうとしていたのだった。でも、今日はもういいか。ふっ切った気持ちで、ロマーノは隣を走るアメリカに声を掛ける。
「飯食いに行こうぜ、マック以外で」
「ええ〜!」
「野菜も食えよ! ……ああ、トマトソムリエの俺お勧めの店があるんだけど」
「まあいいか。じゃ、行くんだぞ!」
 スーツ姿の大人二人で、走って街に飛び出す。おかしな状況に一体何の映画だとさらに笑い、ついでに「青春サイコー!」と意味も無く叫んでみた。雨雲の去った心は快晴で、顔には笑みしか浮かばない。
 酷い恋人の事は忘れて、今日は友情を深めよう。
 お互いに恋人の愚痴を言い合いながら、二人は人ごみの中に紛れて行った。

「アメリカあああああああああー!」
「ロマあああああああああああああああああー!!」
 ショックから立ち直った恋人からかかる電話が、二人の携帯を鳴らすまで……後少し。