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【腐向け】西ロマ+米SS・5本セット

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 決戦となる世界会議の日。仕上がった服一式を手に、ロマーノはアメリカの泊まるホテルの部屋を訪ねた。
「それにしても、何でまたスーツを新調しようって思ったんだ?」
 髪型を整えてやりながら、疑問を口にする。馬鹿にされたのが普段着なら、そちらを改善すればいいだろうに。
「日本が『ギャップ萌え』を狙うべきだって……」
 唇を尖らせ、アメリカは全身を鏡でチェックする。日本が言うには、普段だらしない格好をしている人がきちんとした格好をするとそれだけでグッとくるらしい。
「イギリスは酔うと脱ぐけど、グッとはこないなぁ」
 普段かっちりしている相手が脱いでもどうも思わなかったので、その意見は理解し兼ねる。そう言うアメリカの横で、ロマーノは頬を染めて口元を押さえた。
「……クソッ、判っちまうのが悔しい……!」
 普段農作業着でウロウロしているオッサンのようなスペインが、夜会用の服を身に付け髪を撫で付けている姿なんて思いだすだけで堪らない。
 ああ、確かにときめくな。日本の言う事は当たっていると、アメリカの肩を叩く。彼のこの姿を見れば、流石のイギリスも見直すに違いない。それ程までに、アメリカは新しいスーツを格好良く着こなしていた。
「流石はうちの職人だな」
「そこは元がいいからって言ってくれないかい?」
 二人一緒にホテルを出て、会議場へ移動する。珍しく緊張した表情のアメリカの脇をつつき、ロマーノは率先して会議場へ入っていった。
「お、やっぱりイギリス様はもう来てるぜ」
 いつも通り、会議の時間前にきっちりと到着している男が視界に入る。そしていつも通りフランスと口論している姿に、今なら割って入れるぞとロマーノは背中を押した。
「ううう……。なあ、ロマーノ。俺、おかしくないかい?」
 見返してやると意気込んだものの、流石のアメリカでもなれない姿に不安は付きまとうらしい。珍しい弱気につい吹き出し、背中をバシバシと叩く。念のため髪型も再チェックし、大丈夫と判を押した。
「大丈夫だって! かっこいいぞ、コノヤロー」
「う、うん。行って来る!」
 妙にギクシャクした動きのアメリカを見送り、腕を組んで近くの自動販売機に寄りかかる。見違えた姿に驚く二国の姿をニヨニヨ眺めて居ると、急に肩を叩かれた。
「……俺、ロマにかっこええって言われた事ないんやけど」
「ヴォア!? 何時から見てやがった!」
「二人揃ってここに来てからや!」
 驚かそうと迎えに行ったらホテルに居ず、ヴェネチアーノに聞けばアメリカの所に行ったという。浮気かと泣き出す男を冷ややかに見つめ、ロマーノは溜息をついた。
(格好いいときはいいんだけどな)
 目の前でさめざめ泣く恋人も、きちんとした格好をすればかなりのものだ。何せ自分が惚れる程。惚れた欲目を差し引いたとしても相当なのに、目の前の惨状には気持ちが冷めそうになる。
「だから、あいつとはそうじゃねーって言ってんだろ」
「でも」
「でもじゃねーよ!」
 涙を浮かべる恋人に溜息をつき、曲がったネクタイを直してやる。遥か昔は包み込むような大人だった筈なのに、付き合い始めてからやたら甘え癖が出てきた気がした。
 どちらが親か判らないような現状に、ロマーノは頭を痛める。甘えられるのが嫌な訳じゃない。昔の役立たずっぷりを思い出せば、スペインに甘えて貰えるだけ成長したのだと喜べる。
「……俺とアメリカが浮気なら、お前と馬鹿弟も浮気だな」
「俺はロマ一筋やで!」
「へー、そうなん」
「ロマ〜……」
 冷たい返答にがっくりと肩を落とし、スペインは近くのソファに座り込む。その隣に座ると、ロマーノは体重を彼に預けた。
「お前以外と俺が、何で付き合うって思うんだよ」
 照れ隠しにぐいぐいと体を押し付け、顔を背けて言い放つ。大体失礼な話だ。自分がどんなに人付き合いが苦手なのか、スペインが一番知っているだろうに。
 ビビリで、人間不信で、人付き合いが苦手。
 我ながら酷い三重苦を背負っていると思う。
「俺と付き合える奴なんて、お前しか居ねーだろ。このカッツオ!」
 頬に昇る熱を見られないように立ち上がると、ロマーノは会議場へ歩き出そうとした。その腰にがっしりと抱きつき、スペインが足を止めさせる。
「ロマ、ごめん」
「てめぇ、スペイン! スーツが皺になるだろっ」
「せやね。ロマには俺が必要やったな」
「そこまで言ってねーよ!」
 えへへ〜とだらしなく笑う顔に、パンチを入れる。まったく意に介さない恋人は、あっさりと機嫌を直したようだった。立ち上がり、背後から抱きつく男に鼻を鳴らす。謝るように抱き締める腕は、優しくロマーノを包み込んだ。
「……ラブラブなのはいいんだけれど、ここ会議場なんだぞ」
「ヴォアアアア!」
 すっかり二人の世界に入っていたロマーノ達に、ご機嫌なアメリカが声を掛ける。真っ赤な顔でスペインを突き飛ばすと、ロマーノはアメリカの腕を取って走り出した。
「結果報告しろコノヤロー!」
「あっはっは、バッチリだったんだぞ!」
「浮気はあかんでー!!」
「浮気じゃねーって言ってんだろうが!」
 逃げ出すロマーノに、付き合うアメリカ。その二人を追うスペインの追いかけっこは、ドイツの怒鳴り声が響くまで行われたのだった。