逃避行しましょうか【メフィ燐】
「おやおや、大分制服がマシになってきましたねー」
「うっせぇ」
「ついこの前までは着られている感じでしたのに」
「うっせぇっつってんだろ!黙れメフィスト!」
照れ隠しでかみつくように吠える燐にメフィストはくすくす笑う。
桜吹雪が今年はやけにすごいな、と思いながら目の前の末弟の頭を撫でた。
「高校三年、おめでとうございます」
「お、おぅ・・・あり・・がとな・・・」
目線を逸らされているのが少しばかり気にくわないが、頬を染めて照れている横顔が見られたのだからよしとしよう。
「というわけで、入学のお祝いです」
「金か!」
途端に目の色を変える燐にメフィストは冗談半分、本気半分で肩を落とす。
「どうして君は・・・」
「い、いいだろ!小遣いは大事だぞ!!」
「まぁ、不必要とまでは言いませんがね」
メフィストがいつもの言葉を唱えると、煙とぼんっという音と共に小さな箱が現れた。
メフィストが持っているには余りにもシンプルな箱。黒光する紙で包装され、赤いリボンが巻かれた箱。
「はい。どうぞ」
「ん?なんだ、これ?」
「いいから開けてみなさい」
「お、おう」
綺麗にラッピングしてあるリボンをほどき、包み紙を開ければそこにはドラマなどでよく見る小箱が。
燐はぱくぱくと口が開閉を繰り返し、小箱とメフィストを見比べる。
「ほら、良いからあけてごらんなさい」
「っ」
自分でも優しい視線を送っている事など分かっていた。
目の前で顔を真っ赤に染めて、箱を恐る恐る開ける燐に愛おしさ以外あり得ないのだからしょうがない。
「め、めふぃすと・・・」
小箱から現れたのは、ゴールドリング。対して派手でもなければごつくもない。
簡素で、けれど質のよいリング。
「私からの贈り物、受け取ってくれますよね?」
「っ!恥ずかしいだろ馬鹿っ!」
「ははは!照れている燐は可愛いですね~」
「か、かわいくねー!!」
満開の桜吹雪の下、送った指輪とお揃いのをすでにしていたと言ったら燐は笑うでしょうね。
作品名:逃避行しましょうか【メフィ燐】 作家名:霜月(しー)