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Bad Day

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仕事が終わって携帯を開いてみると、
何だか膨大な量の着信と留守電が入っていた。
履歴を見てみると、全てがりせはだった。



「あ、えっと………」

「あー…その………」

「た・・・・・・・・・やっぱなしっ!!」



無言のまま数秒で切れるものや、用件をなさない伝言ばかりの留守電に、
俺は思わず携帯に向かってため息をついた。



『何なの…あいつ………』



こっちからかけるのも何だか面倒で、特に何もしないまま家に帰った。
マンションの部屋の前に行くと、ドアに紙袋がかかっていた。
中には何故か紙に押されたネコの足型とツナ缶が入っていて、
差出人は不明だったけれど何となく送り主がわかった気がした。



『・・・・・・みーちゃん?』



キャットフードじゃなかっただけ良かった、と思えばいいのか。
とりあえず紙袋を手にとって部屋に入ると、
ゆっくりする間もなく今度はインターホンが鳴った。



「こんばんはー宅配便でーす!
 ご住所とお名前に間違いがなければこちらにサインをお願いします!」

『はぁ………』



誰からだろうと思って伝票を見てみたけれど、
そこには差出人の名前は書いてなかった。
ただ、宅配業者の影から見える荷物に思わず顔がひきつった。

そして、どう考えてもこんなものを送ってくるのは1人しかいない。



『【蓮】さんこれ…どうしろと………』



受け取った荷物は、真っ赤なバラの花束だった。
しかもちょっとした花束なんて可愛い単位のものじゃない。
両手で抱えるのが精いっぱいなぐらいの量の多さだ。

女の人ならいざ知らず、1人暮らしの男がこんなものをもらっても
どうしようか対処に困る、というのが本音だ。

部屋に戻って、花瓶の代わりになりそうなものを探してみたけれど
花なんてわざわざ買ってきて飾ったりしないし、
そもそもこんな大量の花を入れられる花瓶なんてあるわけない。

明日どこかで見繕ってくることにして、
とりあえずはシンクに水を張ってその中に入れた。



『はぁ…やっとゆっくりできる………』



冷蔵庫を開けて何か飲もうとしたその瞬間。
またしてもインターホンが鳴った。



「こんばんはー、荷物のお届けにあがりましたー!!」

『・・・・・・』



いっそ居留守でも使ってやろうかと思ったけれど、宅配業者に罪はない。
仕方なく冷蔵庫を閉めてまた玄関へと思った。



「えーっと…amuさんに、ジギルさんからお届けものです!」

『・・・・・・』



名前を聞いただけで嫌な予感がした。
とりあえず受け取りのサインの前に商品名の欄を見て、
俺は出来る限りにこやかに告げた。



『返品で。』

「えっ?」

『受け取り拒否します。返品で。』

「あ、そ、そうですか…わかりました………」



宅配業者はいぶかしげな表情をしながらも立ち去っていった。
ジギルから送られてきて、それも中身が
"書籍・フィギュア"だなんて嫌な予感しかしない。



『まさか…もうないだろうな………』



玄関を閉めて、今度こそ冷蔵庫から飲み物を取りだした。
こうまで続くと、さすがに疑心暗鬼にもなりたくなる。
慌ただしすぎて何だか疲れた。

ようやくゆっくり出来ると信じてソファーに座って携帯を手に取った。
そういえばあんずさんにもらったメールの返事をしていなかった。
何て打とうか、なんて考えていたら、またインターホンが鳴った。



『・・・・・・』



誰か盗聴器かカメラでどこかから見ているのだろうか。
人がゆっくりしようとする度に邪魔してくる
このタイミングは一体何なんだろうか。



「こんばんはー、ピザのお届けですー!!」

『は?頼んでませんけど。』



玄関まで行くのが面倒で、インターホン越しに会話をする。
薄暗い廊下に人影が見えた。
夜だし、帽子を深くかぶっているせいでよく見えない。



「いや、でもこの住所ですよね…?amuさんのお宅じゃないですか?」

『そうですけど…頼んでないです。』

「え?いやぁ、でも確かにここへのご指定なんで、
 受け取って頂かないと困るんですが…。
 とりあえず玄関開けて引き取って頂けませんか?」

『結構です。そんなに食べられません。お引き取り下さい。』

「ちょっ、そう言わずに!!
 ・・・・・・おい、どうすんだよ!思いっきり怪しまれてるぞ!!」

「だから普通に行こうって言ったじゃん!」

「そんなこと言ったって…!!」

『・・・・・・?』



相手は1人だと思っていたが、どうやら影に数人いたらしい。
インターホンの向こう側で、何やらざわついている。
小声だからしっかりとは聞き取れないけれど、
それでも何だか聞き覚えのある声がいくつか聞こえる。

口の端が、無意識に釣り上がる。
何だか、少し遊んでみたくなった。



『・・・すみません、どちらのピザ屋さんですか?』

「えっ?」

『僕自身頼んでいませんし、知人からそのような連絡も受けてません。
 ミスだといけないんで、お店に確認して良いですか?』

「えぇっ!?あっ、やっ、いやっ、それでしたらこちらでっ!!」

『いえいえそんな。わざわざ届けてもらったのに悪いじゃないですか。』

「いやいやいやいや!こちらのミスだと思うんで!!
 あ、や、でもっ、受け取ってもらえずに帰ってしまうと
 僕たちも怒られてしまうんでここはやっぱり受け取ってもらわないと―――」

『僕"たち"?あれ、ピザの配達だけなのに他に誰かいるんですか?』

「えっ?!あっ、いや、ち、ちちち違います!
 やだな、他に誰もいるわけないじゃないですか!
 従業員全員を差して"僕たち"って言っただけですよ!うん!!」

『へーぇ………』



必死になって言い訳しているのが、妙に楽しかった。
バレバレなんだから、さっさと言ってしまえば良いのに。

サプライズのつもりなのかなんなのか、
これじゃただの迷惑なピザ屋にしか思えない。
まったく、この人たちはいつもツメが甘い。



『お店の名前、教えてもらえます?
 あぁ、あとあなたたちのお名前も。』

「えっ…!?お、おい、ちょっとどうするよ!!」

「どうするったって…」

「もうバラしちゃえば?」

「いやだってここまでしておいてそれは…」

「もーそ〜まさん早くしてくださいよ…重いですよぉ…」

「おいバカ!名前出すな!!」

「この変態」

「ロリコン」

「えぇぇー…みんなしてヒドイ………」

「とりあえずみなさん煩いですよ、多分バレてます。」

「もっ?!」

「黙れナマモノ蹴落とすぞ」

「も゛ーっ?!?!」

『・・・・・・』



思わず、笑いがこみ上げてくる。

何なんだろう、この人たちは。
もう繋がりなんてなくなってしまったと思ったのに、
あの頃とまったく変わらないままでいる。

俺が大好きだった、あの頃のまま。
作品名:Bad Day 作家名:ユエ