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Bad Day

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『…ったく……仕方ないな………』



終わりそうにないやりとりを諦めて、玄関に向かう。
口ではそんなことを言っておきながら、
自然と笑ってしまっている自分が何だか気持ち悪い。
気持ち悪いけど、悪くはない。



―――ガチャッ


―――ゴンッ



『ゴンッ・・・・・?』



鍵を外してドアを開けると、何だか鈍い音がした。
ドアの向こうには予想通りのメンツがいたけれど、
約1名頭を押さえてしゃがみ込んでいた。

とりあえずそれは無視して、他のメンツに目を向ける。



『全員揃って何やってんの?』

「や…やぁ………」

「ひっ、久しぶりー…」



何だかものすごーくぎこちない笑顔で
ピザ屋に扮したりせはとオーナーが挨拶を返して来た。
【蓮】さんとみーちゃんは少し離れたところで様子を見ていて、
あんずさんとタヌは何やら階段付近でモメていた。



『関西店まで全員揃って…どうしたの?暇なの?』

「いや、その………ねぇ?」

「なぁ?」

『・・・・・・今ここに全員揃っている理由を簡潔に述べなさい。
 さもないと今すぐこのドアを閉めて全員通報します。』

「えっ…えーっ?!」

「あああああの!あのさ!!そのっ…今日amuの誕生日だし!!
 だからお祝いしたいなーってなって
 そしたら折角だし久しぶりに全員で逢いたいなーってなって
 それで集まってサプライズでピザ屋でドッキリでえーっと…」

『・・・・・・』



後半が大分日本語じゃなくなっているけれど、
言いたいことは大体わかったし、ほぼ予想通りだった。
とりあえずこんなところで騒いで通報されたくはないから
一旦全員を部屋の中に招き入れた。

・・・はずだった。



『あれ…ドア閉まんない。』

「あーむーさーんー………」

『うわ、何、ジギル、いたの?』

「いたの、じゃないですよー!!あーいったい…
 amuさん開けるなら開けるて言うてくださいよー!!
 僕のこの美麗なお顔に傷ついたらどうしてくれるんですかー!!」

『…あっそ。じゃあな。』

「あー待って待って待って!僕も仲間に入れて下さいよー!!」

『・・・・・・はぁ、仕方ないな…』



ここに取り残しても面倒そうなので、
とりあえずジギルも部屋の中に入れた。
普段人なんて部屋に上げないから、何だか妙に窮屈に感じた。



「あ、俺のあげた猫セットだ。」

「俺の贈ったバラもあるな…」

「あぁそうだ、amu!ジギルの持ってるあれ、俺とりせはからだ。」

『ん?』



何だか重そうにジギルが運んで来たものを見ると、
どうやらコーラを箱買いしてきたらしい。

しかも2箱。



『さすがオーナー、よくわかってますね。』

「amu、俺は?!俺も一緒に考えたんだぞ!?」

『あーはいはい、どうもありがとうございます』

「キィーッ!!なんで俺にはそうなんだよ!!」

「まぁまぁりせは落ち着いて。
 amuさん、これは私からのケーキです。
 後でみんなで食べましょう。」

『マジっすか!ありがとうございます!』



ケーキを受け取って、冷蔵庫に入れに行く。
その途中で、何だか妙に恨めしそうな視線のジギルに服を引っ張られた。



『・・・・・・何?』

「あのー…僕のあげたプレゼントは………」

『あぁ、返した。』

「返した!?僕が選びに選び抜いた一級品なのに!?」

『だっていらないし。』

「いらないってそんな…僕が厳選に厳選を重ねた
 男の娘百科と絆ちゃんのフィギュアなのに!?」

『燃やすぞ。』

「えぇぇぇぇひどいっ!!あんまりですっ!!」



その場に崩れ落ちたジギルはやっぱりスルーして、
ケーキを入れてリビングに戻ろうとしたけれど、
何となくその場で足が止まってしまう。

もう、あの店はなくなってしまったのに。
また、誰にも祝われずに終わると思ったのに。
以前と同じように、大嫌いな日に戻ると思ったのに。

でも、目の前には、
オーナーも、りせはも、【蓮】さんも、みーちゃんも、
あんずさんも、タヌも、あと若干余計だけどジギルもいた。

何だかそれがひどく不自然で、だけど、全然嫌ではなかった。



みんなで他愛もないことを喋って、
時々おかずの取り合いもして、
それでも気付けばみんな嬉しそうに笑っている。

逢っていなかった時間が嘘だったように、
一瞬であの頃の空気に戻れる。

ずっとずっと俺が欲しかったもの。
それを、この人たちは与えてくれた。
作品名:Bad Day 作家名:ユエ