Grateful Days
ディスプレイの端を指ではじいて、理一は難しい顔をした。
「…侘助?」
噂の「ネットゴースト」。それはずいぶんと昔の記憶に埋もれた、同い年の叔父の面影をもっていた。違うとしたら握っているのがぬいぐるみで、祖母の手ではないというそれくらいだ。
とにかく連絡を取らなければ。
そう思い、うまく手中に収めた連絡先を選べば、通話は成立しなかった。いつまでも呼び出し音の残響だけがこだまして、理一は眉根を寄せるしかなかった。
「…侘助…」
作品名:Grateful Days 作家名:スサ