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THE SPEAK OF MY HEARTS!

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 少しずつ心を開いてくれていたバーナビーが、一度は虎徹を信じる事が出来ないと言いながらも、少しでも心を開いてくれたが為に虎徹自身をどこか見捨てることも、完全に信じることもどっちにも出来なかったあの時。
あのセブンマッチの時、倒れた自分の後に戦うことになっていたバーナビーが万が一でも勝てる可能性なんて考えた事はなかったと虎徹は改めて思っていた。
あの時、残されていた女性ヒーロー(まあ、この場合ファイヤーエンブレムのやつもいれてやろうじゃないか、と思いつつ)以外で動けるのはバーナビーという状態で、一番若手のバーナビーが勝てる理由なんかそれこそジェイクの能力の秘密を解き明かして、隙を作ってじゃないと駄目だろうとも、心のどこかで思っていた。
自分自身の能力だけならいざ知らず、あの時はキングオブヒーローのスカイハイも、それこそ学生時代からの腐れ縁であるロックバイソンですら、駄目だったのだ。そんな中で虎徹が冷静に考えたのは単なるハンドレットパワーのごり押しでは確実に勝てないだろうというそんなことだった。もちろん虎徹自身何度もバーナビーに助けられている事実があったけれども、それとこれは比較にならない、また別の問題だった。
そして、一心不乱に自らの親の仇を目の前にしたバーナビーは形こそクールだったかもしれなかったが、バーナビー自身が事実暴走したことあるのを知っている虎徹は、あのバーナビーが画面越しに泣いている気がしたのだ
不安を口にしたバーナビー、そして信じたかったとそう声を上げたバーナビー。
確かに二十歳を超えた大人である彼だっただろうが、その心は尖りながらも無垢で。確かにバーナビーは事実ヒーローであったが、少なくとも虎徹にとってはビジネスパートナーである彼もまた自分の守るべき対象であるとそう思っていた。
だから、あの時。バーナビーを助けたくて、幼い頃に人を救うための力だといわれたハンドレットパワーを……虎徹自身が人を救うためにしか使わないと決めたその力を、自分の体の一時的な治癒に向けた。いや……自分の為というのは少し違う、とそう虎徹は小さく思いながらあの時無理に自己回復力を飛躍的に上げて、やせ我慢して動ける状態までもっていってまでバーナビーの元に駆けつけたのは、あのバーナビーをただ、そう……助けたいというそんな気持ちからの衝動だった。
ヒーローというのは人を救ってこそのヒーローだと思っている虎徹だ。その助けるという対象は一般市民だけじゃなく、その手の伸ばせる範囲を全て守りたいと思うし、助けたいと思っていて、もし一般市民でなくても、犯人ですら危険に陥っていれば助けたいと思うのが鏑木・T・虎徹という人間の人間性だった。勿論、憎いと思う心が人の中にあって、それがバーナビーの全身全霊でジェイクに全て向かっているのも知っていた。だけれど、人を殺すという事にまで走りそうな彼を止めたいと思っていて、それを止める事こそ虎徹はバーナビーを守ることだと思っていた。結局のところ、それの為に早合点して折紙の擬態を見破れずに勝手なままに飛び足した虎徹はバーナビーの『信頼』を裏切るという形をとってしまった。
だけれど、だ。自分に何が出来るか。それを考えると、ジェイクの能力の秘密を嗅ぎ取った虎徹はあの場に駆けつけて、自分自身の手でバーナビーを助けて、そして止めることだけがバーナビーの言う信頼という言葉に対しての答えだと、そう思ったのだ。
確かに、悪と戦うのはヒーローだけれども、殺してしまえば誰かの悲しみを生むことになる。悪を倒す正義が人殺しを行うとき、それは正義のヒーローではなく、ただ、自分の中の正義を振りかざす……そう、ルナティックと同じだ。そうなってしまった時、それはヒーローであるものでなはないと虎徹は思っているのだ。
事実善人だろうが悪人だろうが、人の生き死にの方が虎徹にとっては重要だ。生きていれば人は考えも改めることを出来るし、どんな犯罪者だって罪を償うことが出来る。
「なぁ、死んだらなにも出来ないもんなぁ」
小さくそう呟いた虎徹の声に、何言ってるんですかとバーナビーが声を上げれば、なんでもねぇよと虎徹は声をあげた。
回りの同僚ヒーローは各々もう解散もしていてふたりぼっちの状態で、勿論これからバーナビーもワイルドタイガーもヒーロースーツを脱いで、アポロンメディアに出勤だ。
「ほら、車来ましたよ。このまま会社まで運んでもらえそうですし、早く乗ってくださいよ」
言われて横を見れば、見慣れたトランスポーターがあって、そこの入り口扉には斉藤さんが手を振って二人を出迎えている。
「朝から斉藤さん、元気だなぁ……」
「何言ってるんですか、アナタだって元気でしょう」
「そりゃあ、元気だけが取柄だからな!」
 そんな事を言っていれば、マイクがそのままメットの方に声を伝えてきて、斉藤さんの声が二人に届いた。
『流石だねぇ!タイガー&バーナビー!今期じわじわとポイント稼いでいて、スーツ開発者として腕が鳴るよ!もっと活躍しろよ!こんにゃろう!』
「斉藤さんは、そういう事でテンション高いのね……」
 耳に響くその声に思わずバーナビーと共に虎徹は苦笑しながら、トランスポーターに乗り込むとアポロンメディアに向かうのだった。

     ***

有給が溜まっているようだね、とマーベリックさんに言われた。
社内でたまたま会った彼にそう言われた言葉を確かめるべく、総務課の総務さんと呼ばれている一人の女性に尋ねれば、「全く使っていませんね」と言う言葉を微笑みと共にかけられた。
「どうしますか?バーナビーさん」
言われて悩んでいると、ふと視線を感じてその感じた視線の方を向けば、ロイズさんがこちらを見ていた。
使っていいのか、とふとそんなことを思っていれば、ロイズさんはふうん、と僕を見てから目だけで笑っていた。マーベリックさんから何か言われたのかなと、そんな事を思いながら、その目が優しく見えて僕は総務の人に向けてこう一言声を発した。
「では、一日だけ」
その言葉にわかりました、と告げられた後に、いつにしますか?と更に続けられ、総務のその人は僕にカレンダーを差し出した。どうしようか、と悩んでいると後ろの方で扉が開く音がして、あっ!という聞き慣れた声が僕の耳に届く。
「ここにいたのか、バニー!」
僕の事をそう呼ぶ人間を僕は一人しか知らない。だから、ふう……と息を吐き出す。カツカツと近づく足音は想像通り僕の後ろで止まり、もう一度バニーとその声の主はそう声を上げた。
「バーナビーです、で、一体何の用なんですか?」
「あーなんかマーベリックさんが、バニーの有給が溜まってるらしい……って教えてくれたから、どうせならって思って」
「何がどうせならなんですか?」
「あ、ロイズさんー、俺のこの間ぽしゃった有給、もう一回、使用許可降りますかー」
「は!?何考えてるんですか、アナタ」
作品名:THE SPEAK OF MY HEARTS! 作家名:いちき