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飛空都市の八月
飛空都市の八月
novelistID. 28776
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soleil<ソレイユ>

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 ジュリアスは遅れて集いの間に入った。定例の朝の会議の場所だ。そしてぐるりと見渡す。皆、一様に驚いている。
 というのも、ジュリアスは一切の装身具を外していたからだ。いや……唯一、『忠誠の指輪』だけは指にはめていたけれど。何の意匠も施されていない象牙色をした絹地のトーガに身を包んでいた。
 やがて、一人、また一人、沈んだ表情になっていくのがジュリアスには手に取るようにわかる。訳がわからなさそうにしているのは……鋼の守護聖ゼフェルと……マルセル。二人で顔を見合わせて戸惑っている。
 ゼフェルは無理もない。前の鋼の守護聖は突然その力を失い、急きょゼフェルが聖地に連れられた。ゼフェルに前の彼はいわれのない怒りをぶつけ、何も言わず聖地を去ってしまってそれ以降もう行方がわからない。だから、ゼフェルは知らなくて当然なのだ。
 そしてマルセルは、これから知ることになる。
 ……クラヴィスがいない。相変わらず、か。だが今のジュリアスには、それを怒る気力もない。小さく咳払いすると、ジュリアスは、いつもの朝のように淡々と星の様子や注意事項を話し始めた。
 しばらくして扉の開く音がした。クラヴィスだ。そして、彼はジュリアスの姿を見るとその場に立ちつくした。一瞬話を止めて、ジュリアスはクラヴィスを見た。クラヴィスはジュリアスを凝視したまま、動こうとしなかった。


 −−そなたでも、やはり衝撃は受けるのだな。
 ジュリアスは他人事のように、ぼんやりと思った。