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我らが麗しのパンディモニウム

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「はじめまして、我らが姫君」

「驚くのは無理もありません。貴女は、我らと一切かかわらず生きてきましたからね」

「さて、これから話すことは、きっと貴女をもっと驚かせるでしょう」


「まず貴女は、半分ほど人間でありません。悪魔なのです」


「『悪魔などいない』? そうですね、きっと藤本は――貴女の養父殿はそう教えたでしょう」

「しかしこれは紛れもない事実。貴女の中には、確かに悪魔の血が流れているのです」

「それも、魔王と呼ばれる悪魔の血が」


「そう、魔王ですよ。悪魔の長、悪しき将の将、誰よりも畏れられ疎まれる存在」

「貴女はその落胤なんです。姫君」


「その魔王なのですが、そろそろ崩御なされようとしていましてね。……ああ、簡単に言うなら死ぬということですよ」

「つまり、我ら悪魔はある種の道標を失いつつあるのです」

「だから今、虚無界を挙げて後継者を探さんと躍起になっている」

「分かりますか? 貴女はその後継者」


「貴女こそ、次代の魔王に目されているんですよ」


「『そんなものは嫌だ』? 『帰りたい』? そうですかそうですか、それなら仕方ない。しかし姫君」


「貴女の弟君と養父殿――彼らに、安穏の中で暮らしてほしいとは思いませんか?」


「貴女が覚悟を決めれば」

「貴女が玉座に就けば」

「貴女が悪魔を統べれば」

「彼らは、平穏に暮らすことが出来ますよ?」

「……さぁ、お選びください」


「我らが女王となり虚無界へ堕ちるか、徒人(ただびと)のフリをして物質界に留まるか」