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愛と友、その関係式 第23話第24話

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愛と友(ゆう)、その関係式
<下>終始

第二十四章 目指す未来

 インターハイ”はばたき学園”男女優勝という輝かしい栄光をそのままに、八月末までの長期休暇は終わりを迎えた。
 ときは九月。二学期の初登校した校舎にはバスケ部おめでとうの文字が躍った垂れ幕が掲げられていた。
 バスケ部員達は登校してから始業式、SHRが終わるまでひきりなしの賞賛と祝福をかけられ続けた。特にインターハイの主役であった三年は引退も相まって半ば卒業式のような雰囲気で、関係ないのに涙ぐんでいる生徒さえでる始末だ。
 ようやく今日の学校行事を全て終え生徒達は帰路につく。
 興奮冷めやらぬなか、美奈子も帰ろうと廊下を一人歩いていると担任の氷室教諭に呼び止められた。
「四月の進路相談の話を覚えているか? その件で本田先生から話があるらしいのだが、進路指導室へいけるだろうか」
「四月――? あっ」
 確か、一流体育大学から推薦がきていて条件はインターハイ優勝だった。
 美奈子は取り繕うように笑った。
「大丈夫です。ちゃんと覚えてます」
 インターハイに引退と続いて、すっかり気が抜けてしまった美奈子は推薦の話も抜け落ちていた。
「引退で気が抜けてしまうのは解るが、しっかりしなさい」
 氷室はわずかに顔をしかめるが、直ぐに肩を竦めて微笑んだ。
「――それはそうと、優勝おめでとう。担任として、君をたいへん誇らしく思う。よくやったな、小波」
「先生……」
 不覚にも美奈子は涙ぐんでしまう。それもそのはず、氷室は手放しで人を賞賛したりはしない。つまり言葉の意味が重いのだ。
 入学時からやれテストだ補習だと反目しあうこともあったが、認めることはきちん認めてくれる。
 ――私、先生の生徒でよかったよ――。
 などと、つい魔がさすように自分の世界へ浸りそうになる。数コンマおいて美奈子は我に返った。
「本田先生によろしくと伝えておいれくれ。それでは」
 氷室は踵を返すと、すたすたと去っていく。あははと作り笑って美奈子は手を振った。
 氷室の姿が見えなくなると、大きく息を吐いた。
「駄目ね。感傷的になってる」
 美奈子もくるりと背を向けた。それから歩きだす、目指すのは本田先生のいる進路指導室だ。
 廊下を歩いて窓の外を見る。残暑が残るグラウンドは日ざしで熱気がこもっていた。そこには三年を欠いた在校生が部活動に勤しんでいる。
「もう、終わりなんだよね」
 やはり感傷的だ。美奈子は頭を振った。
 だが、終わる部活動に残りわずかな学園生活、感傷的になるも仕方無いというものだ。美奈子は諦めて自嘲気味の笑みを浮かべた。
 ――それに……。
 美奈子は目を細めた。グラウンドの更に先、町並みの奥に見える海――また更に先を見ようとした。
 美奈子の中にある決意が生まれていた――。
 
◆◇◆◇◆

 コンコン、と数度ノックして進路指導室の扉を開いた。部屋のなかには既に本田教諭が机に座って待っている。本田は美奈子へ向かいの席を手で勧めた。一礼して美奈子が座ると、本田は口を開く。
「始業式の日にすまないな。呼んだのは他でもない、一流体育大学の推薦の話だ。四月に話していた通り、条件であるインターハイ優勝で先方も是非にと……」
「先生!」
 美奈子は本田の言葉を遮った。大きな声に本田は面食らった顔をしている。
 美奈子はやや照れたように笑った。
「すみません。あの、推薦のことなんですけど。断ろうと思うんです」
「えっ!?」
 今度は本田が大きな声を出し、身を乗り出して美奈子へつめよった。
「どうして?」
「それは――目標が見つかったんです。私の人生で一番に大事なことです」
 本田はがりがりと前髪をかくと、どっかりと席へ座りなおして天井を仰ぎみた。
「つまり、それは他に希望する進路があるということか」
「はい。……すみません」
「いや、いいんだ。こればっかりは本人の意思だからなぁ」
 本田は机のうえに出されていた資料を封筒へしまいこんでいく。
「なぁ、一応訊いていいか? 推薦を蹴ってまでやりたい事って何だ?」
「留学です」
 再び本田は面食らった顔をした。同じことをのたまう人物の前例があるせいか、口端を若干だけ引きつらせる。
「まさか、お前も本場でプロになりたい……とか?」
 美奈子は苦笑って首を振った。
「違います。私は世界のバスケがみたいんです。バスケの素晴らしさを伝える仕事がしたい」
「ほぉ……。ああ、いや待て待て。お前、自分の成績がわかってるか?」
 一瞬だけ感心しかけてはみたものの、本田はすぐ顔を青くした。指摘はもっともで、いくら格好の良いことを口では言ってみても成績を鑑みれば絶望的だということは美奈子も解っている。
「だから、頑張ります」
「頑張ります、か。うぅん」
 本田が腕組みして目を閉じ唸る。しばしして、顔を上げた。
「じゃあ、こういうのはどうだ? 推薦して入る、それから休学願いをだして留学する。これなら、気の迷いかどうか判断する時間が持てる」
「気の迷いじゃありません!」
 思わず声を荒げてしまった。美奈子ははっとすると口を閉じて、下唇をかみしめる。
「それに……そういうの好きじゃありません。推薦は本当に望んでる人が受けるべきです」
「うっ。確かにそれが理想なんだろうけどなぁ。実際は能力のあるものが優先される。それが不服だというなら優遇に見合う努力を個人でするべきだ。――小波、お前はこの高校三年間の部活でそれに見合う努力と成果をあげただろう? だからこそ、ふいにしてしまうのはな。利用できるものは利用すればいいのに」
「――インターハイの優勝まで行きついてようやく解ったんです。バスケをプレイする側じゃ、どうしても勝てない相手がいることに。私がするべきことは選手側にはないと思いました」
「まさか」
 本田は信じられないと首を振った。確かに世界を見渡せば、日本の高校で頂点をとったぐらいでは敵わない選手がいるだろう。だがしかし、日本では頂点なのだ。絶対的な力の差に簡単に絶望するようなレベルの選手ではないはずだ。
「ああでも、使命感とかそういうのじゃないんですよ」
 本田の思考を読み取ったように、美奈子は気の抜けた笑みを浮かべながら言い足した。
「私が、そうしたいんです。……バスケや運動を嫌いになったわけじゃないですし、むしろ前より大好きになりました、けど……だから、選手としてはもう無理なんだと思います」
 これ以上は水掛論になると予想して美奈子は席を立った。
「あの、ありがとうございます。心配してくれて」
 深深と頭を下げる。
 本田は他にも言いたいことがありそうだったが、結局は唇を真一文字に結んで微笑んだ。
「バスケ以外でも何か力になれることがあったらいえよ」
「はい」
 美奈子は今一度だけ深深と頭を下げて、踵を返した。
 
◆◇◆◇◆

「断る!」
 数十分後に進路指導室へ入ってきた鈴鹿和馬は、本田の言葉が終わらない内に大きな声で切り捨てた。
 予想通りの反応に本田はおかしいやら悲しいやら、力ない笑みを浮かべている。
「やっぱり、お前も留学か?」
「おう!」
「一応、お前にも訊くが……休学扱いで一年間は留学させてもらうってのはどうだ?」