【腐向け】西ロマSS・5本セット【にょたりあ】
(もうちょっとだけ……)
暖かい部屋で毛布にくるまり、椅子の上で体勢を整える。痛む体をずらし、より良い体勢を捜した。暖かい体と暖かくなった心。ふわふわとした気持ちは、眠りの淵を行ったり来たりしていた。疲れていて眠りたいのに、ロマーナが居るので眠ってしまいたくない。
暫くして部屋にまで届く、美味しそうな匂いが胃を刺激する。起きようか、どうしようか。まだだるい体を思えば、眠っていたい。
「……まだ寝てる」
空腹を訴える胃を宥めていると、ロマーナが部屋まで戻って来た。呆れた声に、どこか寂しさが見えるのは気のせいだろうか。
椅子に近づく気配に、急に起きて驚かせてやろうと企む。タイミングを伺っていると、頭に優しい手が置かれた。慈しむように撫でられる頭。その手はゆっくり頬を撫で、そして離れた。
驚きで放心してしまい、起きるタイミングを完全に失ってしまう。心の中で、赤らむ頬がバレないでくれと思わず願った。ロマーナからの積極的な行為に、胸がバクバクしている。
「……バカ」
小さな呟きと共に、落とされる額へのキス。それに駄目押しされ、ついに椅子から体が剥がれた。
「ロマーナあああああああああ!!!」
「ちぎー!!」
もう駄目です、もう無理です。眠ってなど居られるかと、溢れる思いのままに可愛い子を抱き締める。ああもう可愛い、俺のこの子はとんでもなく可愛い。いくら恥ずかしいからって、眠っている時にそんな事をするなんて!
「スペイン、まさか……お、起きててっ」
「ああ、もう好きやー! 大好きやー!!」
撫でる手もキスもバレていたと気付き、羞恥の為にロマーナが腕の中で暴れる。それを腕の中に押し込め、顔中にキスをした。頬に、額に、瞼に。……そして、唇に。
「愛しとる」
何と言われようと離さないし、誰にも渡せない。そんな気持ちで抱き締め続ければ、顔を真っ赤にしたロマーナは胸に顔を埋めてか細い声を絞り出した。
「……私も」
どうやら両思いだったらしい。歌いだしたい程の上機嫌を感じていると、盛大にスペインのお腹が鳴る。そういえば、胃が空腹を訴えていたのを忘れていた。
「ご飯、出来てるけど」
呆れたような、笑いを堪えるような顔でロマーナが言う。
見事に告白の甘い空気は消え失せてしまい、仕方なく食事に移る事にする。二人で食事をし、ロマーナからバレンタインデーのプレゼントを貰った。仕事続きで花も買っていなかったと謝るスペインに、可愛い恋人は唇を尖らせる。
「別にいいけど、その代わり」
頬を赤らめ、視線を逸らす仕草。
「……また、キスして」
そこから先の言葉は、スペインの口の中に消えていった。
作品名:【腐向け】西ロマSS・5本セット【にょたりあ】 作家名:あやもり