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【腐向け】西ロマSS・5本セット【にょたりあ】

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夢見る5月


 平日の昼下がり。ショッピングでもと街を歩いていたロマーナは、一軒の宝石店の前で足を止めた。ショーケースに飾られているのは、美しい細工のピアス。デザインに惹かれ良く見れば、小さくエメラルドがついていた。
(エメラルド……スペイン……)
 スペインの国石・エメラルド。連想で彼を思いだしてしまい、ロマーナの頬が赤らむ。
(可愛いけど、エメラルドか)
 自分の目の色に合う色ではあるが、これを見る度にスペインを思い出してしまいそうで恥ずかしい。勿論気にしているのは自分だけなので、他の人には気付かれないとは思うが。
(ヴェネチアーノはによによするかも、だけど)
 変な所で聡い弟には気付かれるだろうなと溜息をつき、またショーケースを見つめる。可愛いデザイン、欲しいけれど恥ずかしい。
 頭に浮かぶスペインの笑顔に頬の熱を上げ、首を振って想像を追いやる。何につけても彼を連想してしまう自分の頭にがっかりし、自分だけがスペインに振り回されている状況に腹が立った。
(いや、これは値段のせいだからっ!)
 先程からずっとピアスを見つめているのは、この微妙に高い値段の所為。買うかどうか迷っているだけなのだ。
(スペインのことなんて考えてなーい!)
 電話をしても繋がらない、メールの返事は返ってこない。忙しいとは聞いていたけれど、何の音沙汰もない男相手にヤキモキするのも馬鹿らしい話だ。そもそも自分はまだ想いを伝えてすらいない。ただの親分子分なのだ。
(やっぱり、無理なのかな)
 漏れる溜息がガラスを曇らせる。
 昔は大人になったら恋人になれると思っていた。そういう対象になれると。でも、成長した今も自分はスペインにとって子分に過ぎない。親しい人の一人でしかない。
(ああ、どうしよう)
 もう長い時間ここに居る。流石にどうするか決めないと、お店の人の視線が痛くなってきた。気分も落ち込んでしまったし、もう帰ろうか。
(デザインはいいのに。せめて、もう少し安ければ)
 欲しいのに、あと少しで手に届かない。こんな所もスペインのようだと泣きたくなり、ロマーナはショーケースから体を離した。
(諦めてしまえばいい。ピアスも、……スペインも)
 それでも未練がましく見つめていると、離れた所から聞きなれた声がする。
「ロマーナ!」
「スペイン……」
 久しぶりやな〜と言いながらこちらに来る人物は、間違いなく想い人。ネクタイを緩めたスーツ姿のまま、いつものように再会のハグをしてきた。それを嬉しく思いつつ、ハグされる前に見えた同行の女性が気になって離れる。
「家寄ろう思ってたんやけど、こんな所で会えるなんてラッキーやんなぁ」
「し、仕事じゃないの?」
「もう終わったで!」
 やっぱり忙しかったのか。いつもの笑顔に疲労の影が見え、思わず心配してしまう。何と話を続けようか迷っていると、スペインは先程までロマーナが見つめていたショーケースを覗き込んだ。
「何なに? 何欲しいん?」
「べ、別に……」
 エメラルドの特別な意味に気付くと思えないが、本人に向かっては言いにくい。どう誤魔化そうかチラチラ見ていたせいか、お目当てのピアスはスペインにバレてしまった。