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BSRで小倉百人一首歌物語

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第40首 忍ぶれど(サナ→ダテで佐助と幸村)



 「ねえ旦那、こんなこと聞きたくないんだけどさ…想い人でもいるの?」
 思い切って切り出したような佐助の言葉に、幸村は筆を止めるが、すぐに気にしていない振りをして筆を走らせる。幸村の背後に立つ佐助からは、その表情は見えない。
 「…なぜそのようなことを聞く」
 「そんなの、旦那の顔見たらすぐに分かるよ」
 佐助の勘が正しければ、相手は幸村の好敵手のあの男。佐助はあの男がどうにも好きになれなかった。好敵手として刃を交えるのは一向に構わない。だが、それを超えて仲良くなろうというのは少々危険な気がした。あの男は間違いなく幸村を食い潰す。
 くしゃりと紙を握る音がした。動揺して書き損じたのだろう。まったく、これで心を隠していたつもりなのだから、始末に負えない。
 はあ、と呆れた様な溜息をついてから、佐助は一気に捲し立てた。
 「旦那の想い人は、なんとなくだけど分かってるよ。たぶん旦那にとっては魅力的な部分があったんだろうね。だけど、それはやめておいた方がいい。性別とか身分とか、そういうことを言ってるんじゃない。その人は、たぶん旦那を駄目にしてしまう」
 その言葉に振り向いた幸村の目を見て、佐助はぞっとした。その目は怒りを通り越して、もはや憎しみさえも感じられるような色を宿していたのだ。
 「お前に何が分かる」
 「分かんないよ、あの人のことなんて…」
 「お前に俺の何が分かる」
 そしてそれ以上の会話を拒否するように、幸村は顔を背けてしまった。

 音もなく部屋を後にして、独り木の枝に腰かけ佐助は考える。旦那の何が分かっているか?偉そうに忠告を与えておいて、実は何一つ分かってなんかいないのかもしれない。だが、傷つくことが目に見えている恋路へ向かう主を放り出しておいて平気なほど、佐助は冷たい忍ではなかった。
 「…しばらく様子を見るしかないねえ」
 溜息とともに呟いた言葉を、憎らしいほどに美しく光る弦月だけが聞いていた。
 

 忍ぶれど 色に出でにけり わが恋は  ものや思ふと 人の問ふまで    

作品名:BSRで小倉百人一首歌物語 作家名:柳田吟