新 三匹の子豚Ⅱ
近くまで来た時、ブーが突然言いました。
「おい、あれなんだろう?」
フーとウーが、ブーの指差す方を見ると、何やら原っぱに寝転がっています。
近くまで寄ってよく見ると、どうやらライオンのおじいさんのようでした。
「あっ、ライオンだよ」フーが驚いて言います。
「本当だあ」ウーが頷きました。
三匹がしばらくじっと見ていましたが、そのライオンは動きません。
「どうする?」ブーが弟たちに意見を求めました。
「うーん、やっぱり怖いし放っておこうよ」
フーが答えました。
「でも心配だよ。もしかしたら具合が悪いのかもよ」
ウーが心配そうに言いました。
「だけど近付いた途端に食いつかれたらどうする?」
臆病なフーがぶるっと身体を震わせて、
「やっぱり放っておこうよ」と言います。
ブーはどうしたら良いのか決められないようです。
「じゃあ僕が行ってみるよ」
そういうと、兄さん二人が止めるのも聞かずに、ウーがそばへ行きました。
「おじいさん、ライオンさん。どうしたんですか? 具合でも悪いんですか?」
恐る恐る尋ねました。
「うぅーー」
何だかそのおじいさんライオンは、消え入りそうなうめき声を上げました。
「大丈夫ですか?」ウーが重ねて問うと、
「腹が……減って……」とだけ言うと、ぐったりとしてしまいました。
あっ、お腹が空いてるんだ――そう気づいたウーは早速背中のリュックを降ろすと、中から自分のお弁当を取り出し、おにぎりを一個おじいさんライオンの口元へ置きました。
するとおじいさんライオンは鼻をふんふんと鳴らし、口元のおにぎりに気づくと舌を伸ばしてぺろりと食べました。
でも、まだ起き上がることはできないようです。
仕方なくウーは、二個目のおにぎりを上げました。
おじいさんライオンはすぐにぺろりとそれも食べてしまいました。それでもまだぐったりしているおじいさんライオンに、とうとうウーはおにぎりを全部上げてしまいました。
それでも足りなくて、ブーとフーが反対するのを押し切って、兄さんたちのおにぎりまで全部、そのおじいさんライオンに食べさせてしまいました。
「あーあ、これでもうハイキングに行けないや」
と、ブーが言うと、
「そうだよ。せっかく朝早くから頑張って作ったのに……」
と、フーが口を尖らせました。
「兄さんたちごめんなさい。でも、このおじいさんよっぽどお腹が空いてるみたいだし、どうせ僕たちはもうハイキングには行けないから、このおじいさんをうちまで連れてってご飯を食べさせてあげようよ」
心優しいウーが言いました。
ブーとフーは最初反対しましたが、どうしてもウーが聞かないので、仕方なくみんなでおじいさんライオンを支えながら家に連れて帰りました。
とりあえず言いだしっぺのウーの家におじいさんライオンを連れて行き、食事を用意して食べさせました。
それでようやく少し元気を取り戻したおじいさんライオンが、初めてまともに口を利きました。
「ありがとうなあ、子豚さんたち。とても美味しかったよ。お陰で少しだけ元気も湧いてきた」
にっこり微笑むじいさんライオンに、ウーが尋ねました。
「おじいさん、一体どうしたんですか?」
ブーとフーも、おじいさんライオンの答えに耳を澄ませています。