新 三匹の子豚Ⅱ
「いやあ、お恥ずかしい話じゃが、こう見えてもその昔は、獲物を取れない日などなかったんじゃが……」
そう言って、黄色いお髭をなでながら、
「やはり年には敵わんのう。すっかり老いぼれてしまって、子供たちにも見放されてしまったんじゃ」と淋しそうに言いました。
「えっ、それって子供さんたちに捨てられたってこと?」
ブーがとっても失礼なことを言いました。
「アッハッハッハ。はっきり言うのう」
そう言っておじいさんライオンは、怒ったりせずにおかしそうに笑いました。
「わしもなあ、若い頃は今とは全然違って、雄雄しく気高く、子供たちにも尊敬の目でみられたもんじゃった。それが自慢でもあったんじゃ」
「ふうーーん、そうなの?」
フーが感心したように相槌を打ちました。
「うん、わしらライオンはな、子供たちを千尋の谷へ突き落とすんじゃ。わしも父親からそうされた。だからわしも、父に習って同じようにしたんじゃ」
「えっ、谷へ落としちゃったの?」
ブーが目を丸くして言いました。
「そうなんじゃ。知らないものが聞いたらなんて酷い親だと思うかも知れん。だがな、そうやって本当に強く逞しいものだけが生き残り、種の保存をしていくんじゃよ」
「へえぇ、種の保存?」
ウーが呟きました。
「うん。難しいかもしれないが、そうやってわしらは、百獣の王の座を維持してきたんじゃ。しかし、わしもこんな風に年を取ってしまうとなあ……。仲間にとっては、ただの邪魔者でしかないんじゃ」
「ふうーん」
三匹が声を揃えて溜息をつきました。
「獲物も取れないような老いぼれは、野垂れ死にするしかないんじゃ」
そう言ったおじいさんライオンの目には、涙が光って見えました。そして、悲しそうに呟きました。
「それがわしらの宿命なんじゃよ……」
そう言うと、疲れたのか横になってそっと目を閉じました。