新 三匹の子豚Ⅱ
――しばらくの間、静かな沈黙の時が流れたあと、ウーがそっと、ブーとフーを隣室に呼んで言いました。
「ねえ、兄さんたち。あのライオンのおじいさんを僕たちで面倒見てあげようよ」
「えっ、そんなの無理だよ! だって、おじいさんって言ったって相手はライオンだよ。僕たちだって、いつ食べられちゃうか分からないじゃないか」
ブーが絶対反対というような顔で言いました。
「そうだよ。兄さんの言う通り。ずっと一緒にいるなんて危険だよ。ご飯だっていっぱい食べさせて上げたんだから十分だろ? もう出て行ってもらおうよ」
フーも兄の意見に同意のようでした。
「そんなの可哀想じゃないか! 兄さんたちは、もし自分が年とった時、子供たちに捨てられても平気なの? 僕は嫌だよ。捨てるのも捨てられるのも……」
「うーん、そう言われるとなあ、オイラだって捨てられるのは嫌だよ」
ブーがそう言って俯きました。
「俺だって……捨てられるのはなあ……」
フーも肩をすぼめます。
「でしょう? だったら僕たちでおじいさんライオンの面倒を見てあげようよ。ねっ!」
ウーが声を弾ませて言いました。
「う、う…ん」
ブーとフーが仕方ないなあって顔で、しぶしぶ頷きました。
「ありがとう、兄さんたち」
ニコニコしながらそう言うと、ウーはおじいさんライオンのところへ行きました。
「ねえねえおじいさん。もうおじいさんは自分で食べる物を探せないんでしょ? だったらこれからは僕のうちにいれば良いよ。僕が野菜を作ってるから、それを食べればいいよ!」
「ありがとう。気持ちはとっても嬉しいんじゃが、わしは野菜だけじゃ生きていけないんじゃ。だからせっかく助けてもらったけど、また独りで、どこか死に場所を探しに行くよ。死ぬ前にお前さんたちと話ができて良かった。それに最後の晩餐まで食べさせてくれて、本当にありがとうよ」
そう言うとおじいさんライオンは、ウーが止めるのも聞かずに、よろよろとした足取りで出て行ってしまいました。
それからのウーはとっても悲しそうです。
見かねたブーとフーがウーを慰めました。
「元気出せよ、ウー。仕方ないじゃないか、おじいさんが自分で出て行くって行っちゃったんだから」
「そうだよ。俺たちにできることはしたんだからさっ」
「うん、だけど……」
ウーはやっぱり気持ちがすっきりしませんでした。