【かいねこ】鳥籠姫
含み笑いを漏らしながら、ディンブラを促し、客間を出ていく玉露。
残されたカイトといろはは、お互いの顔を見合わせ、
「あの人が、君のマスター?」
「はい!あのっ、カイトさんにはご迷惑じゃなかったですか!?」
「迷惑?どうして?僕、鳥かごから出されたの、初めてだ」
カイトは、きょろきょろと辺りを見回し、溜息をつく。
「この部屋も初めてだ・・・・・・こんな部屋があったんだね。知らなかった」
「あの、カイトさんは、鳥かごから出たくなかったんじゃないですか?」
いろはの言葉に、カイトは驚いたように振り向き、
「何故?僕は、ずっと・・・・・・ああ、そうか」
思い当たったのか、笑みを浮かべた。
「童話の鳥かご姫は、籠の中から出たいと思わなかったものね」
「はい。だから、あの」
「大丈夫。僕はずっと、籠の外を見たいと思っていたから。あの話が好きなの?」
「はい!大好きです!」
「そうなんだ。少し意外だな。あれは、悲しい話だから」
カイトの言葉に、いろはは勢い込んで、
「大丈夫です!マスターが、最後を直してくれましたから!!」
「え?」
「マスターが、書き直してくれたんです!だから、鳥かご姫と闇の王子は、何時までも幸せに暮らすんです!!」
いろはの勢いに、最初はあっけにとられたカイトだが、ふっと笑顔になり、
「そうか、君のマスターは、天才だものね。何でも出来てしまうんだね」
「はい!マスターは、凄い人なんです!」
「そうだね。僕のことも、鳥かごから出してくれたし・・・・・・」
カイトは、少し考え込んでから、
「鳥かご姫は、王子と一緒に外を見れたよね?僕も、外の世界を見てみたい。彼女のように、自分の目で。こんなこと、お願いするのは気が引けるけれど」
「大丈夫です!マスターにお願いしてみますから!」
いろはが勢い良く言うと、カイトは申し訳なさそうに目を伏せる。
「ありがとう。でも、無理はしなくていいから」
「大丈夫です!マスターは凄い魔道士ですから!」
夕飯の誘いを固辞して、玉露といろははディンブラの屋敷を後にした。
移動の魔法陣を使って館に戻ると、いろはは玉露の腕を掴んで、甘えた声を出す。
「マスター、お願いがあるんですぅ」
「ああ、カイトを外に連れ出して欲しいんだろ?」
「え!?何で分かるんですか!?」
「お前が言いそうなことだからだ」
「お願いします!カイトさんと約束したんです!」
玉露は、しがみついてくるいろはの頭を撫で、
「今すぐって訳にはいかないぞ。物には順序があるからな」
「はい!ありがとうございます!!」
「まあ・・・・・・気になることもあるからな」