【かいねこ】鳥籠姫
「マスター!お客さ」
「追い返せ」
「おい、せめて、誰が来たかくらい聞けよ」
アッサムの言葉に、玉露は無言で、しっしっと手で追い払う仕草をした。
「くそ、ムカつく。俺はハエか」
「ハエのほうが、まだ存在意義があるな。いろは、馬鹿が伝染するから、離れていなさい」
「しねーよ!」
結局書斎から追い払われ、アッサムはいろはとともに客間に移る。
お茶の支度をしてきたいろはに、アッサムは持ってきた本を渡した。
「いろはにお土産。あいつは、こんなの読ませてくれないだろうから」
「ありがとうございます!どんな本ですか?」
「怖い話。夜、眠れなくなっちゃうかもな」
アッサムが脅すと、いろははきょとんとした顔で、
「私は人形だから、寝る必要はないです」
「ああ、そうか。うん。ごめん」
首を傾げるいろはに、何でもないと笑うアッサム。
手を伸ばして本を広げると、「魔道士の出てくる話もある」と、指で示した。
早速読み始めるいろはを、微笑ましく見守っていたら、
「悪趣味な物を持ってくるな」
「いーじゃん、これくらい。相変わらず過保護だな、お前は」
仏頂面の玉露が、音もなく客間に入ってくる。