【かいねこ】鳥籠姫
「何の用だ」
「用がなくちゃ、来ちゃいけませんか」
「当たり前だ。用があっても鬱陶しいのに、用もなく来るなど迷惑な上に不愉快だ。今すぐ帰れ」
「何でお前は、俺に対してそんなにキツいんだよ。何なの?愛なの?」
「帰れ」
「んな怒るなよー。用があるから来たんだからさー」
アッサムは、懐から折り畳んだ用紙を取り出し、玉露に渡した。
玉露は、紙を開いてさっと目を通すと、
「魔道具か」
「そ。儀式用だから、精密さが求められるんですよ。お願いしますわ」
「こんなものに頼る程度の奴が、儀式を執り行うからだ」
「お前なー、世の中、お前レベルの魔道士ばっかじゃないんだぞ?」
玉露が口を開くより早く、いろはが顔を上げ、
「マスター!死んだ人を生き返らせる儀式なんて、あるんですか!?」
一瞬、客間に沈黙が訪れた後、玉露が腹を抱えて笑い出す。
「アッサムの言うとおりだな!おとぎ話の読みすぎだ!!」
「お前、そこまで笑わんでも」
「酷い!マスターの馬鹿!!」
むくれてそっぽを向いたいろはに、玉露は涙を拭いながら、
「ああ、悪かった。まあ、あるにはあるな。黴が生えてるようなのが」
「カビ?」
首を傾げるいろはに、アッサムが、
「蘇生の儀式は、大昔に廃れてしまったんだよ。今じゃ、そんな儀式があったことすら、知らない奴が大半だね」
「それこそ、おとぎ話の中くらいだな、残っているのは」
玉露はまだ笑いながら、椅子に腰掛けた。