【かいねこ】鳥籠姫
ディンブラの屋敷を訪問してから、しばらく経った頃。
いろはは、玉露から使いを頼まれ、無事届け物を済ます。
そのまま移動の魔法陣で帰ろうとして、しばし躊躇った後、ディンブラの屋敷に足を向けた。
玄関の呼び鈴を鳴らすと、程なくして白髪の執事が扉を開ける。
「おや、あなたは」
「あ、あの、マスターに、えっと、玉露様に仕えるいろはと言います。カイトさんに会わせてもらえますか?」
「今日は、旦那様がお出かけになっているから・・・・・・」
だが、執事はそこで、主人から「玉露には最大限の便宜を図るよう」言いつけられていることを思い出した。
ここで、この少女を追い返せば、帰ってからそのことを主に話すだろう。あの偏屈で有名な魔道士のこと、何が気に障るか、分かったものではない。
あの人形に少し会わせるくらい、何でもないことではないだろうか?
「・・・・・・少しの間で良ければ、どうぞ」
「はい!ありがとうございます!」
いろはの為に扉を開けると、喜び勇んで飛び込んできた。
老執事は先に立って、いろはをカイトの部屋へ案内する。
「キャンディさん、カイトにお客様です」
執事が声を掛けて扉を開けると、丁度キャンディが香を炊いているところだった。
「あら、あなたは」
「いろはさん!」
カイトが声を上げると、キャンディは驚いたようにカイトを見てから、くすっと笑って、
「私達はお邪魔みたい。さあどうぞ、邪魔者は退散するわ」