【かいねこ】鳥籠姫
「全く、用が済んだら、まっすぐ帰ってこいとあれほど」
「ご、ごめんなさい」
身を縮めているいろはに近づいて、玉露はふと顔をしかめる。
「お前、ディンブラの屋敷にいたのだろう?」
「え?はい」
「以前カイトに会った時と、同じ匂いがする」
「あ、キャンディという人が、お香を炊いてたからかもしれません。いつも炊いてくれてるって、カイトさんが言ってました」
「へえ。いつもねえ」
「どうかしたんですか?」
玉露の反応に、いろはが戸惑っていると、
「この匂いは、魔道士が儀式で使う香だ。魔力を上げる効果があるが、そう頻繁に炊くものじゃない。そのキャンディという奴は、魔道士ではないのだろう?」
「はい。秘書をしているのだと、カイトさんは言ってました」
「ふーん」
玉露は、しばし思案した後、
「まあ、取り越し苦労かもしれないが、早めに手を打っておくか」