【かいねこ】鳥籠姫
町から離れた場所に立つ、一軒の館。
そこに住むのは、異国から来た黒髪の魔道士。
抜きんでた魔術の腕と、気むずかしく偏屈で人嫌いなことが有名なその男は、一体の人形と共に暮らしていた。
「マスター、お客様ですよ!」
「追い返せ」
書斎の扉を開け、いろはが声を掛けると、主人である玉露は不機嫌な声で言う。
「お前、いきなりそれはないだろー」
いろはの背後から、客のアッサムが顔を出した。
玉露は、不機嫌さを隠そうともせず、
「どうせお前だからだ。邪魔だから帰れ」
「酷いなー。せっかく来てやったのに」
「そうか。そんな手間を掛けさせるのも悪いから、二度と来なくていいぞ。今すぐ帰れ」
「何でお前はいつもそうなの?もうちょっと愛想良く出来ないの?」
ふんっと鼻を鳴らして、玉露は机に向かう。
アッサムは呆れながら、いろはの頭を撫で、
「いろはも、こんな主人じゃ大変だな」
「そんなことないですよ。マスターはとても優しい人です」
「いろはに触るな。汚れる」
「俺はばい菌か!!」