【かいねこ】鳥籠姫
ディンブラの屋敷に着き、玄関の呼び鈴を鳴らすと、しばらくしてから扉が開いて、キャンディが顔を出す。
「お待たせして申し訳ございません。執事が外出しているものですから」
申し訳なさそうに頭を下げると、三人を屋敷の中に通した。
「どうぞこちらへ」
キャンディが先に立って階段を上がる。
そわそわと落ち着かないいろはの手を取り、ホール内を物珍しげに見回すアッサムを小突いて、玉露も後からついていった。
「玉露様とお連れ様がいらっしゃいました」
キャンディはそう言って、カイトのいる部屋の扉を開けた。
部屋の中にはディンブラと、鳥かごに入れられたカイトがいる。
いろはの姿を見つけたカイトは籠の扉に近づき、いろはは、そわそわしながら玉露とカイトを交互に見つめた。
ディンブラは愛想のいい笑みを浮かべ、
「やあ、これはこれは。お待ちしておりました」
ひとしきり適当な挨拶が交わされた後、玉露が懐から小さな箱を取り出す。
「あなたの鳥と交換するのに、ふさわしい出来だと自負しておりますよ」
そう言って蓋を開けると、中には小さな腕輪が納められていた。細かな細工と中央に鎮座した青い石が、冷徹な輝きを放つ。
一歩離れて見ていたアッサムが、感嘆の溜息を漏らした。
ディンブラは息を飲み、吸い寄せられるように腕輪を凝視する。
「おお・・・・・・これは・・・・・・」
「満足頂けましたかな?」
玉露が蓋を閉じると、ディンブラは物欲しげな表情で、
「いや、これほどのものを頂けるとは。私は、生涯の運を使い果たしてしまったようですな」
「常に最高の物を提供するのが、私の信条でして」
玉露の言葉に、ディンブラは満足げに頷いた。
「あなたと取り引き出来て、これほど嬉しいことはないですよ。私も、あなたに満足頂けるよう、最高の状態に整えておきました」