【かいねこ】鳥籠姫
「いろはさん!!」
カイトが鳥かごの扉を開けようと、闇雲に揺らしていたら、
「あー、うるさい。静かにしろ」
玉露が、呆然としているアッサムを引き剥がしながら言った。
「でも!!」
「すぐ開けてやる。騒ぐな。怪我人の手当が先だ」
「怪我人」の言葉に、カイトは息を飲んで、倒れているディンブラに目をやる。
「だ、大丈夫なのでしょうか・・・・・・?」
「お前が騒がなきゃ、大丈夫だ。邪魔をするな」
玉露は膝をついて、ディンブラの上に屈み込んだ。
やっと我に返ったアッサムが近づき、
「て、手伝おうか?」
「ほう、お前に治癒の呪文が使えるとは、初耳だな」
「あ、使えません。ごめんなさい」
「邪魔だ」
「はい、すいません」
しおしおとその場を離れるアッサム。
玉露は、ディンブラの傷に手をかざし、小声で呪文を唱えた。
苦悶の表情を浮かべていたディンブラの顔に、血の気が戻ってくる。乱れた呼吸も、徐々に規則正しいものに変わった。
玉露は、他に怪我はないか、ざっと点検した後、床に放り出された鍵束を手に取り、立ち上がる。
「ほら、出してやるから大人しくしてろ」
鍵を差し込み、鳥かごの扉を開けると、カイトを外に出した。
「アッサムと一緒に客間に行ってろ。俺は、こいつを寝かせてくる」
「あ、はい」
「一人で運ぶ気か?手伝うよ」
アッサムの申し出に、玉露は露骨に顔をしかめて、
「カイトを連れて、客間に行ってろ」
「・・・・・・分かったよ。そんな顔することないだろ」
ぶつぶつ言いながら、アッサムはカイトを促し、部屋を出ていく。