【かいねこ】鳥籠姫
「マスター、おきゃ」
「追い返せ」
「お前も相変わらずだね、本当に」
いろはの背後から、アッサムが顔を覗かせる。
その後ろから、カイトもやってきて、
「アッサムさん、こんにちは」
「おー、カイト。元気そうだな。どうよ、新しい暮らしは?玉露に苛められてないか?」
「とんでもない。マスターはとても優しい方です」
「カイト、そいつの相手をするな。馬鹿が伝染する」
「しねえよ!!」
玉露に追い払われ、アッサムはいろはとカイトを連れて客間に移った。
いろはがお茶の支度をする間、カイトはアッサムと向かい合い、
「あの、キャンディさんはどうなりましたか?」
「うん、まあ、意識は戻ってない。正直に言うと、見込みはないと思うな。あれだけの儀式の反動だし、魔力の耐性もないし」
「そうですか・・・・・・」
「生き残っただけ、奇跡だよ。よくまあ、押さえられたもんだ。あ、ありがとう」
いろはからお茶を受け取ると、アッサムは一口啜って、
「召還した魔物を横から支配するとか、理論上は可能でも、実際やる奴なんて、あいつくらいだろうな。かなり危険な賭けだよ」
「お前がいなかったら、もっと楽に済んだだろうがな」
玉露が、ふらりと客間に入ってくる。
「ディンブラの方は、何か言ってきたか?」
「いや、何も。使用人達は、何が起こったかも知らないし。あ、キャンディは、公爵が面倒見るそうだ。病院の手配とか、費用なんかも全部」
「身内はいないのか」
「いないらしい。だから余計に、追いつめられたのかもな」
いろはが、玉露の袖を引いて、
「マスター。公爵様はどうして、キャンディさんの面倒を見るんでしょう?自分を刺した人なのに、怒ってないのでしょうか?」
「お前にはまだ早い」
それを聞いて、アッサムが笑いながら、
「お前だって、縁遠いじゃないか」
「黙れ、役立たず」
「くそ、ムカつくけど反論できない」