NO.6集
主客転倒(ネタ・ネズ紫ネズ)
「わあー・・・やっぱネズミって綺麗だね。」
「今、言うな・・・」
ネズミは心底落ち込んだように言った。
「っくそっ・・・なぜだ・・・。」
朝目覚めれば虫になっていた男の話なら物語で読んだ事はある。
だがしかし・・・なぜ自分が・・・
「そんなに落ち込まないでよ。きっと原因はあるよ。僕も調べるから。」
「・・・あんたの天然具合が今ほど羨ましいと思ったことはない。いや、だがあんたも今の風貌に変わった時は心底びっくりしてたじゃないか。」
「ああ、そうだったね。でももう慣れたよ。それに君がこの髪やこの蛇行を褒めてくれるから・・・。ネズミもきっと慣れるよ!そうそう、ほんと綺麗だよ。って言っても見た目はさほどかわらないけど、ね。」
「・・・だから・・・今、言うな・・・。って、慣れてたまるかァァァ!!」
ネズミは心底絶望した。
たいがいの事には動じないつもりでいたが、これは酷過ぎる。
本当に原因がまったく分からない。
まさか・・・これも森の民と関係ないだろうな・・・?
いや、まさか。こんなそれこそ自然に逆らったような。
「ね、大丈夫!きっともとにもどる方法はあるよ!ちょっと血を調べてみるから、腕、いい?」
ネズミが悶々と考えている間に、いつの間にか紫苑が注射器などのセットを用意していた。
そして手際よく血を抜き取る。
「よし。じゃあこれはいくつかに分けて分類するとして・・・あ、ごめん、まだ腕から血が出てるね。」
「いや、こんなのは舐めときゃいいから。」
「そうだね。」
紫苑がニッコリとしてネズミの腕をとり、チロ、と注射針をさしていたところを舐める。
「っ・・・。って、なにあんたが舐めてんだよ。」
「ん?あ、そうか。」
「ったく・・・その天然すぎるとこ、どうにかしてくれませんかね、陛下。」
ネズミはさっと離れて、打たれそして舐められたところをもう一方の手で覆った。
少し、なんだかズクン、とした自分が嫌になる。
それに普段は今でも周りに気を張っている癖が抜けないというのに、この紫苑にはまた不意に近づく事を許した。
「・・・ねえ、ネズミ。」
「?何。」
「男の姿だと、その格好でも問題ないと思うけど、やっぱり女性の姿だと、上着は着たほうがいいと思うよ?」
そう。
ネズミは起きたらすでに女の体になっていた。
「・・・そうだな。」
「あ、でもまだ着るのはまって。」
「は?」
「良い機会だと思って。」
またもや紫苑がニッコリと意味が分からない事を言いだした。
「だから。言葉を省くのはやめてもらえませんかね、陛下。俺にも分かるように言ってくれ。」
「あ、ごめん。ほら、いつもはさ、君が僕を抱くだろ?」
相変わらずニッコリとしたままサラッととんでもない事を言う。
「っ?」
「でも今は君は女性だ。だったら僕がきみを抱くのはなんらおかしい事じゃないよね?」
「っ・・・はぁ!!??」
「だから良い機会だな、と思って。」
変わらずニッコリとしたまま、紫苑が近づいてきた。
「ちょ、ちょっと、待て!!な、何言ってんだ!?あんた、何言ってんだ!?」
「いつも君ばかり、ずるいじゃないか。僕だって君を攻めてみたい。どういったものか、好奇心がある。」
「ちょっ、変なところで好奇心を沸かすな!!まったく研究肌のヤツの考える事は!!おいっ、ち、近づくな!!」
「なぜだい?攻めなければ答えは手に入らないと言ったのは君じゃないか。」
「いや、そのセリフ、まったく違う意味で言ったから!ちょ、ほんと、よせっ!」
「大丈夫、君と違って、僕は優しくするよ?ね?」
「ね?、じゃ、ないーーーーってまさかいつもの仕返しのつもりじゃないだろうな!?」
女の姿は力までもが変わってしまったようだ。
やすやすとニッコリしたままの紫苑に組みしかれたネズミは、心底、いつも歯止めがきかない自分を呪った