人魚
兄弟は違うノリを持ちつつも同じ意図でロイにあれこれ言い出した。ロイも初めこそきょとんとしてそれを聞いていたが、段々事態に頭が追いついたのだろう。ふっと笑うと、さて、とすっかり聞いていない調子で歩き出した。
「おい、大佐―――」
いくらか慌てた調子でエドワードが呼ぶのに振り返り、ロイは少々意地の悪そうな顔で笑った。
「ちゃんとおねだりできたら、考えてあげないこともないんだが。…どうする?」
彼はえらそうに言って、どうだ、とばかり少年を流し見る。
どうにも気まずいような、気恥ずかしいような、いたたまれないような沈黙が落ちて。
「…まあとにかく朝食を食べに戻らないか?」
その沈黙を破ったのは、それをもたらしたロイである。彼は意地の悪そうな表情を消して、やわらかく誘う。
「今日はいい天気だし、まだ始まったばかりなんだから」