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冬の旅

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 リリーはびっしりと水滴がついているアイスティのグラスをストローでかき回した。からからと氷が音を立てて、耳にも涼やかな音をたてる。
「シリウス、リーマス、ジェームズ。男の人たちっていつも楽しそう」
「三馬鹿トリオね」
「リリー、あの人たちのこと嫌いじゃないのになんでそんなこと言うの?」
「なんっか波長が合わないの。リーマスが優し過ぎるのもダメだわ」
 綺麗に整えられたストレートの金髪をぐしゃぐしゃとかき乱すリリーのしぐさにアリスは吹き出した。こういった彼女のしぐさは整った外見からの冷たそうなイメージを親近感あるものにしていた。
 性格はさっぱりしていて陰湿さはどこにもなく、はっきりとものを言うところはアリスも見習いたいと思っていた。口は悪くても本当は誰よりも人のことを気にかけていてフォローも忘れない優しい女性だということをアリスは知っていた。リリーが嫌がるから口にしないけど、フランクにはこっそりと照れ屋さんなのよと言っている。
「ところでジェームスとはどうなっているの?」
「なにが?」
 何を言っているのかわからないというリリーの表情にアリスはあら? と思う。よく二人で話し込んでいるのを見かけるのに。
「付き合ってるとか」
 途端に笑い出したリリーに驚く。ざわついている店内でも注目されるほどの声量だったが気にする様子もないリリーにアリスは困ってしまって顔を赤らめた。
「何言っているのよ。どうなるもなにもないわ」
 そしてまた爆笑する。ついには咳き込み始め、アリスはおろおろと見守った。
「大丈夫? 紅茶飲む?」
「あははっ。あー、笑いすぎて涙まで出てきた」
 目元をぬぐいながらもリリーの口からはこらえ切れない笑いがもれている。綺麗に口紅がひかれた唇がつやつやと光っていた。
「最高に笑えるジョークね。久々にこんなに笑ったわ」
「冗談を言ったつもりじゃなかったんだけど。楽しそうによく二人で話をしているからそうなのかなって思ったの」
 肘をついてリリーは激しく手を振った。ボタンを3つはずした白いシャツから大きく胸元が見え、キャミソールを着ていることがわかっていてもドキリとする。
「ありえないわ。ジェームズには好きな人がいるの。知ってるでしょ? 噂」
「えぇ、でも」
「あの噂は本当。隠しているわけじゃないのに誰も信じていないだけ。まぁそうよね、相手はスリザリンだったし、浮いてたもの。試しに聞いてみるといいよ、否定しないから。反対にでれでれとあぁだこぅだと自慢してくる」
「同級だったわよね。私、顔を思い出せないわ」
 とまどい気味のアリスの言葉をリリーはばっさりと切り捨てる。
「存在感ないからね。でもジェームズとはかれこれ4年くらい続いてる」
「まぁびっくり。リリーととても仲良しだからてっきりお付き合いしているのかと思っていたわ。いつになったら話してくれるのかしらって思っていたのに」
「ジェームズと仲がいいですって? 冗談きついわ、アリス」
 大げさに顔をしかめてリリーはうんざりと言った。ジェームズは学生時代からなにかしらと目立つし、不本意ながらリリーも目立つ。アリスだけでなく騎士団の中にも勘違いしている人が多く、興味本位で話をふってくる人も後を絶たなかった。
「でもなんとなく似てる、リリーとジェームズ」
「あんなに自意識過剰じゃないわよ。私たちがよく話しているのはね、セブのことよ」
「ジェームズの好きな人ね?」
「そ。セブと私はね、小さなころによく遊んでたの。いろいろあって今は疎遠になってるけど。セブのことがなかったら話もしてないな」
「まあ。そんなことはないと思うけど。4年もおつきあいしているなんて知らなかったわ」
「ジェームズがぞっこんなのよ。あんなうっとうしい男に好かれてセブも大変だわ」
 顔をしかめたまま、リリーは肩をすくめた。
「言い過ぎよ。ジェームズはとても素敵だわ」
「アリスにかかったらみーんな素敵な男性よ。まったくフランクが泣くわ」
 お手上げだというような口調のリリーにアリスは微笑んだ。こんなことを言いながらもリリーが本当はあきれていないことを知っているからだ。
「ジェームズってお家を探していたでしょ? ゴドリックの谷で。移ったのかしら?」
「あぁ、あれ。セブのためだよ、たぶん。あいつが騎士団本部から離れるわけないし。過保護ねぇ」
 リリーはスコーンを口に運びながら、にやにや笑った。つられてアリスも笑いだす。
「あらそうなの? ふふっ、見かけによらずジェームスって情熱的なのね」
「かっこつけだからね。他人にはツンと澄ましてるけどセブにベタ惚れ。尻を追っかけまわしてるのよ」
「もぅリリー、ジェームズのことを悪く言い過ぎ。二人はお付き合いしてるんだから仲良くていいじゃない」
「うーん、ごめん。なんか気に食わないの。不思議よねぇ」
 リリーは自分でもすっきりしない気持ちを持て余しているようで「もうこれは相性が悪いとしかいいようがないわ」ときっぱり言い切った。
「うふふ、きっと自分に似すぎているからよ。ほんとそっくり」
「やめてやめて。ぞっとする。ね、そんなことより、やっぱり考えてみて式のこと。食事会みたいなのはどうかしら。気が合う人たちだけでパーティとか」
「わぁ、それならお願いしたいな。フランクも喜ぶと思うわ。リリー、忙しくない? 大丈夫?」
 手を組み合わせ、目を輝かせたアリスの声は喜びにうわずっていた。
「まっかせて。どうせだからジェームスに手伝わせるわ。けっこう使えるヤツなのよね。それにたまにはセブを解放してあげなきゃ。ちょっと前まであの二人、一緒に住んでたのよ」
「え、同棲?」
「そうじゃなくて、リゾートごっこなんですって。二十歳の男が何言ってるのかって話よ。セブのアパートでいちゃこらしてたんでしょ」
 リリーの言いようにアリスは吹き出した。
「ジェームズって可愛い人ね」
「うっとうしいのよ。セブがどうした、こうした、素敵だってそんなことばかり言うんだもの」
「あははっ、私も聞いてみたいわ」
「異常よ、もう。一度でも聞いたら離してもらえなくなるからやめておいたほうがいいわ」
 うんざりとリリーは言った。
 ジェームズがそれほどまでに好きになった人とはどんな人なんだろう。リリーにはともかく、ジェームズはアリスにはいつでも紳士的な態度をとっていて、あまりプライベートを想像させなかった。
「会ってみたいなぁ」
「セブに?」
「ええ、ジェームズがそんなに好きな人なんてとっても興味あるわ。品がないかしら」
「さぁ。喜んで紹介してくれると思うけど、アリスなら」
「そう?」
「あいつはセブに会わせたくない人を徹底して排除してるもの。私もずっと会ってないな」
「まぁ」
「嫉妬してんのよ、私がセブの小さいころを知ってるから。ただそれだけよ、それだけでセブに近づくなって言うんだから心が狭いわ、極小よ」
 ふてくされたかのような言い方にアリスは笑わずにはいられなかった。熱心に話し込んでいるように見えたのに、こんなコントのような内容だったなんて。
「ぷっ。いつものジェームズからは想像できないわ」
「いいところはセブ一筋浮気なしってとこだけね」
「名前なんだったかしら。スネイプよね」
作品名:冬の旅 作家名:かける