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愛と友、その関係式 第25話第26話

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愛と友(ゆう)、その関係式
<下>終始

第二十六章 聖夜

「きいたか?」
「きいたきいた。天童が勉強してるっつーの? あれマジだったんだな……。この前見たんだぜ、ファミレスではば学生と」
「マジでぇ、げぇっ。ちょい幻滅かも。――そんでアイツは?」
「天童の片割れだろ。そういや、急に一緒にいるとこみなくなったよな」
「喧嘩でもした?」
「わかんね。けどよ、だったらちょいやばいよな。ヨタ高のやられた奴らが黙ってねぇって。あいつら、二人だから喧嘩が強いんだ。一人なら――あ」
 そこは羽ヶ崎の校舎裏。俗に言う不良のたまり場で、そこにいた男子高校生二人は紫煙をくゆらせながら喋っていた。
 不意に言葉を止めたのは、ゆらゆらと揺れる煙の奥に渦中の人物の姿を見つけたからだ。
 その人物は気だるそうに二人を睨みつけて、それから何事もなかったかのように立ち去った。
 
「はば学の女と――。目立つことしやがって天童壬の馬鹿野郎が」
◆◇◆◇◆

 時は十二月二十三日、清しこの夜と定番のクリスマスソングが流れる街を鈴鹿は一人歩いていた。
 目的は、今宵開かれるクリスマスパーティーに必要なクリスマスプレゼントを買うためだ。
 今年で参加するのは三回だが、理事長宅で行われるパーティは何処か別世界のように感じた。それは鈴鹿の親の教育方針が質素で生きることを美徳としていて感覚が庶民に近いせいかもしれない。まあ、実際、三原や須藤などと比べると鈴鹿の家は庶民ともいえる。……比べる相手が間違っている気もするが。
 とりあえず、このプレゼントを選ぶという行為は気どっているようで誰に見られているわけでもないのに気恥ずかしくなる。それでも、ああでもない、こうでもないと鈴鹿なりに悩みぬいた末にようやく一つのプレゼントを掴むと包装を頼んで、店の袋に入れてもらった。
 店を出る頃には、冬の短い青空がすっかりと赤くなってしまった。
 薄暗くなり始めた街に赤や緑のイルミネーションが光りだす。玩具の音楽隊が楽しげにベルを鳴らしてクリスマスの到来を待っている。心なしかすれ違う人たちは笑顔だ。
 そんな街を映すショーウィンドウに、浮かない顔をした自分を見つけて鈴鹿は立ち止まった。
 ガラスには、高校一年より少しだけ大人びた高校三年の自分がいる。
 当たり前のことなのに妙に驚いてしまった。
 ――そうか、もうすぐ卒業なんだよな。
 苦笑いすると、ガラスに映った自分も浮かない顔をしたままにが笑い。
 ――しけたツラ。
 溜め息をつくと、ガラスの顔は厳しい顔になる。
  気分が沈んでしまうのは卒業が近いからとありきたりな理由じゃなく日常に小波美奈子が足りない、たったそれだけのことだった。
 考えれば高校三年に進級してから美奈子と休日に遊んでいない。インターハイが終わってからはまともに話してさえいない。唯一、話せた出来事さえ、あの校門での事で結局のところ美奈子と喧嘩別れのようになっている。
 もちろん、あの校門でした話も気になっているのは事実だ。美奈子と話せば、またその話題になってしまうのは解る。だけど――……。
 ――美奈子と話してぇ。馬鹿みたいに笑って、ときどき喧嘩して。それから、ボーリングしてゲーセンいって温水プールいって勝負。あったりまえだろ。
 それは美奈子と出会って間もない頃と変わらない。思えば、好きだと意識する前のほうが沢山のものを持っていた。
 ――だから、友達だっつったのによ。結局、何も変わらねぇじぇねか。
 友達に戻っても、やはり前のようには戻れなかった。鈴鹿が美奈子が幸せであるようにと願ってしまうからだ。
 それに話しかけられないのも話しかけてこないのも、遊ばないのも遊べないのも、それが姫条とうまくいっている証だと納得している。たとえ、紺野が言ったように美奈子が鈴鹿と紺野が付き合っていると誤解していた結果だとしても。
 だけど、勝手に湧きあがる寂しいという感情はどうしようもなくて、やるせない。
 ――それに。
 目を瞑る。鈴鹿はショーウィンドウから視線を外すと再び歩き出した。
 それは美奈子に関わる出来事で引っかかること。
 ”小波がな――。推薦を断ったんだよ、バスケで勝てない相手ができたとかなんとか”
 監督の言葉が蘇る。そう、美奈子の突然の進路変更。
 文化祭の消極的な参加。それから、更にもう一つは放課後真っ先に学校を後にする美奈子の姿。何をしているのかは、ついこないだの期末テストの結果で察せられた。美奈子の赤点はなくなっていたのだ。つまり、勉強。
 ますますもって美奈子の留学という言葉に真実味が増してきた。これは間違いなく本気だ。
 校門で似たような疑問を美奈子へぶつけたが、鈴鹿の一番の疑問は姫条はどうするのだろう、それだった。
 ――姫条は知ってんのか?
 かといって姫条には訊けなかった。姫条は美奈子とは違って、いつも通り変わらない態度で日々を過ごしている。だから、余計に”美奈子”の話題を何気なくふれなかった。
 毎日の学校は直ぐに姿をくらます。しかも学年最後の文化祭でさえふいにしたのだ。姫条だって美奈子とじっくり話している可能性は低い。
 それに校門で話していた他校生。感情剥きだしで怒った美奈子に平然としている姫条。何処かうわのそらな藤井と紺野。
 何かが自分の周りで目まぐるしく変化している。なのに、自分だけ置いてけぼりをくらったようだ。
 なぜ、いまさら留学なのか。姫条はちゃんと知っているのか。
 ――姫条は本当に知らぇのかも……、まさかな。いや、でも、だったら――。
 ポツンと胸の中に落ちてきた言葉に、鈴鹿はますます顔を曇らせた。
「そうだとして何がしてぇんだよ。俺は」
 ”和馬には関係ないよ”
 鈴鹿の一番の不安が美奈子の声を借りて代弁した。
 
◆◇◆◇◆

 十二月二十四日――クリスマスパーティー当日。
 鈴鹿が会場である理事長宅へ着く頃には、結構な数の生徒達が既に入場済みであった。
 受付をすましてコートを預かってもらう。いつもの大きなホールに入ると沢山のテーブル、沢山のごちそう、洒落た形のグラスに入ったソフトドリンクが不釣合いに揺れている。毎年するように、まずはバスケ部の関係者をぐるぐると訪ねまわった。
 洒落めかしたバスケ部員たちはおどけた調子で聖夜を祝い、空気に酔った者がまるでお酒でも飲んだように顔を赤らませた。通過儀礼のようにクリスマスの雰囲気をぶち壊す馬鹿騒ぎを監督に止められる。落ち着いた頃合に、マネージャーの紺野珠美に話しかけられた。
「あの、和馬くん」
「――ん? なんだよ、紺野」
 鈴鹿が紺野と目をあわすと、紺野はぱっと顔を赤らめ思い出したように口にした。
「メリークリスマス」
「おう。メリークリスマス」
 鈴鹿が笑って返す。と、気づいた回りのバスケ部員達が二人を囲んだ。部員の一人がニヤニヤとした笑みを浮かべて鈴鹿を覗きこむ。
「お、おぉ? 何だか良い感じ? 卒業を前にしてのー?」
「ばっか、そんなんじゃねぇよ」
 鈴鹿はそいつの顔を広げた掌で覆うと端へ避けた。
「あらら、つれねーな。ね? 俺らのマネージャー」
 別の部員が今度は紺野の顔を覗きこむ。
「あ、えっと」