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愛と友、その関係式 第25話第26話

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 紺野は困惑した表情で言葉を濁した。鈴鹿は溜め息をつくと、紺野の顔を覗きこんでいる部員の襟首を掴むと引き離す。
「俺らのなら困らせてんじゃねぇよ」
「やだ、和馬かっこいい。俺と付き合って」
「ほんと馬鹿だな」
 くつくつと笑って鈴鹿。むくれる部員は今度は紺野の手を取って、少しきざったらしく首を傾げた。
「じゃあ、珠美ちゃん付き合って」
「えっ、えぇっ」
 紺野が悲鳴に近い声を上げた。あの、そのと言葉に詰まって、紺野が俯く。
 鈴鹿は再び部員の襟首を掴んで引き離した。
「だから、困らせんなって。……おい、紺野。おいしい食べ物があったんだろ、何処か早く教えろよな」
 言い捨てて鈴鹿は歩きだす。もちろん、それは口からでまかせだ。察した紺野は一礼すると慌てて鈴鹿の後を追う。
 元いた場所から大分離れると鈴鹿はようやく立ち止まった。
「――あの、ありがとう」
「おう。……で、どうしたんだよ。何か話があるんだろ?」
「え、あ。ああ、うん」
 うっかりしていたとばかりに紺野は片手で顔を覆った。それから、少しだけ沈んだ顔をして俯いた。
「美奈子ちゃんのことだよ。”今日も”いないんだね……って。文化祭も、引退後の部活も参加してないよ。ねぇ、和馬くんは何でだか知ってる?」
 鈴鹿はがりがりと後頭部をかいた。
「そっか。アイツ、きてねぇのか――。今日くらいはくりゃいいのによ」
 クラスのほうに顔を出していなかったので気がつかなかった。
 鈴鹿は紺野の顔をまじまじと見る。
 さて、どうしたものか。迷うのは、自分が知っている他人の情報を勝手にペラペラと喋っていいものか、ということだ。そもそも、自分が知っているのだって美奈子の後に進路相談を受けたからである。
 紺野の顔は何かを深く思いつめているようにも見えた。まだあのことを気にしているのかもしれない。
 鈴鹿は溜め息を吐いた。
 なら、紺野のために説明は必要かもしれない。美奈子も怒りはしないだろう、多分。
 鈴鹿は一つ咳払いした。
「もうバスケは選手としてやらねえんだとよ。それで留学したいとかなんとかって監督がいってたぜ」
「え……留学?」
「おお、だからよ。文化祭とか部活とかこなかったのは、そのせいなんだろ」
「つまり、勉強してる…ってことなのかな」
「多分な」
 鈴鹿が頷くと、”そっか”と紺野は小さく呟いた。
 紺野の表情は晴れなかった。むしろ、ますます思いつめた顔をして眉根を寄せる。
「なぁ――、お前のせいじゃねぇぜ。前にも言っただろ」
「違うの……そうじゃないよ。……そうじゃないの」
 紺野は俯いて首を横へ力なく振った。
「私ね――」
 と、そのとき鈴鹿の携帯が胸ポケットで震えた。
「わりぃ、電話だ」
 携帯電話を取り出すと、そこには姫条の文字。鈴鹿は一瞬躊躇うが紺野が見ていることを思い出す。ここで電話に応じなかったら、紺野はますます誤解を深めてしまうだろう。鈴鹿は観念して通話ボタンを押して携帯を耳へ押しつけた。
「――和馬か?」
「おう。つーか、何で電話なんだよ。同じ場所にいんだろ?」
「ちゃうちゃう。バイクでちぃと転んでまって、いま家なんや」
「ハァ!? おま、大丈夫かよ」
「大丈夫やって。ほんの捻挫」
 姫条はケラケラと笑った。鈴鹿はほっと息を吐くと、ふと気づいた。
 美奈子はクリスマス会場にいない。姫条もいない。それはつまり――。
 鈴鹿は携帯を耳から話すと通話口を掌で覆い、紺野へ顔を向けた。
「電話、姫条からなんだけどよ。姫条もここにいねぇんだと、だから、美奈子は姫条といるんじゃねぇか?」
「えっ」
「考えすぎなんだよ。紺野は」
 鈴鹿はくつくつと笑みせて、言葉を待たずに再び携帯を耳へ当てた。
「わりぃ。ここじゃ声が聞こえずれぇからベランダに出る」
 話しながら、鈴鹿は紺野へ目配せした。小さく呟く。
「じゃあな」
 軽く手を振って、鈴鹿はベランダへ足を向けた。

◆◇◆◇◆

 鈴鹿の姿はあっという間に人の波に紛れてしまった。
「そんなはずないよ」
 紺野はポツリと自分にしか聞こえない声で呟いた。
 紺野を気持ちと裏腹に、楽器隊が音楽を陽気に奏でる。紺野は目を細めると、鈴鹿がいなくなった方向を眺め続けた。
 鈴鹿が紺野の不安を和らげようと作り笑いをしたのは知っていた。だが、鈴鹿の思う不安は何処にも存在しないのだ。
 ――違うよ、和馬くん。
 走って追いかけて言い聞かせても、きっともう無駄だろう。心は頑なで、紺野の言葉に少しも耳を傾けようとしない。考えようとしない。
 自分と同じで無意識に思考を停止している。
 残る、もう一つの方法を――。
 紺野はぎゅっと下唇を噛みしめた。
 それは今よりずっと痛い。想像しただけで、息が止まりそうなくらい苦しかった。
 留学するという美奈子、それが実現するかどうかはしれないが――だが、やらなければ手遅れになる。
「美奈子ちゃん……そっか、それが出した答」
 紺野のなかで一つ、決断が生まれようとしていた。
 
◆◇◆◇◆

「もしもし、――またせたな」
 分厚いカーテンの奥にある扉みたいなガラス戸の隙間から外へ身体を滑りこませて、鈴鹿はベランダへ出た。
 白いバルコニーは暗闇に映えて、神秘的な雰囲気を醸しだしている。手すりに上半身を預けた。
「で、なんだよ。わざわざ、こんなときに電話したんだ何かあんだろ?」
「用ってほどでもないんやけど……、和馬はクリスマス楽しんどるんかなーって気になってな」
「はぁ? なんだそれ」
「はは、俺もようわからん。けど、気になった」
 姫条が苦笑っている。鈴鹿は呆れて溜め息を吐いた。
「――別に。普通だぜ、普通。バスケ部の連中と馬鹿やったりよ……、姫条こそどうなんだよ。美奈子もいんだろ?」
「……は? なしてそうなるんや」
「え?」
 そこで二人して黙りこんでしまう。しばらくして、電話口の奥で姫条の咳払いする声がした。
「状況は大体わかったわ。……そうやなぁ」
 うぅんと姫条が呻き、一転、全く何のことか理解できない鈴鹿は首を捻る。
「よし! 和馬、今から見舞いに来い」
 姫条の突然の提案、鈴鹿は眉間に大きく皺を寄せた。
「はぁぁ? やだよ、さみぃし」
「ええから。すぐこい、いまこい。来ないと、補習の課題をメガネくんに頼んだのバラすで」
「ふふん。頼んだのは随分前、時効だろ」
「ヒムロッチがそんなん認める思うか?」
 うぐっと鈴鹿は声を詰まらせた。悔しいが姫条の言う通りだった。通称ヒムロッチこと氷室教諭が過去のことだからと許すはずがない。
 鈴鹿はこれみよがしに大きく溜め息を吐いた。
「仕方ねぇ。行ってやるぜ」
「よっしゃ。……じゃあ、まっとくからな」
 そして、ぷつりと姫条からの電話は切れた。
 鈴鹿は胸ポケットに携帯をしまいこむと、会場内に戻った。出口付近でたまたまあった理事長に帰るのかと尋ねられた。姫条宅へ行くむねを伝えると、なんと出しそびれた(とはいっても学生にはご馳走の部類だ)食べ物を手土産にともたせてくれた。
 姫条宅へついたのはおおよそ一時間後くらいだ。
 インターホンを押すと、温かそうな部屋着に身を包んだ姫条が顔を出した。
「ようきた、ようきた」