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愛と友、その関係式 第25話第26話

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 そう言って、姫条は鈴鹿を部屋へ招き入れた。
 倉庫を改造した部屋はやはり空調が何処かおかしくて、こんなふうな真冬だとほんの少し肌寒い。だから、こんなに厚着なのかと鈴鹿が妙な納得をして、姫条は電気代も馬鹿にならんからなぁと笑った。それから、鈴鹿が手土産を渡すと姫条はぱっと目を輝かせて”和馬にしては気がきいとる”と賞賛する。他愛もない話を一言二言交わしてから、姫条は温かいコーヒーとミルクが入ったコップを持ってきた。ミルクを鈴鹿へさしだし、どかりと部屋にあるパイプベットへ座る。鈴鹿も適当な場所へ腰をおろした。
「すげぇんだな。ちゃんと生活してるって感じだぜ」
 姫条が自活しているというのは聞いていたが、いまいち実感はなかった。だが、こうして姫条の部屋に入ると妙に生活感が滲んでいて感心する。
 姫条は謙遜するでも自慢するでもなく、楽しそうにニンマリと口端を持ち上げた。
「せやろ」
「で、怪我は大丈夫なのか?」
「ぼちぼちな」
「そっか」
 ――と、ふと鈴鹿は姫条の部屋をきょろきょろと見回した。
「美奈子は帰ったのか? 俺が来るからって、んな気つかわなくても良かったのによ。俺だって、何が野暮くらい解ってるぜ。姫条の用が終わったら直ぐ帰るって」
 ペラペラと喋って、湯気たつコップへ唇をつける。貼りはじめていた薄い膜が呆気なく破れて、再び温かいミルクと交じり合う。喉を動かすと、冷たくなっていた身体が奥の方から温かくなっていく気がした。唇を離す。
「てかよ。ちゃんと上手くいってんだな。心配して損したぜ。――美奈子、文化祭とか学校とか最近忙しそうにしてんだろ。だから、俺はてっきり……」
 と、そこで鈴鹿は言葉をきった。
 いつもならうるさいくらい――とまではいかないが寡黙でない男が黙っているからだ。
「何だよ」
「何が?」
 姫条は至って涼しい顔で訊きかえした。
 困ったのは鈴鹿だった。
「……いや、なんか喋れよ。調子くるうじゃねーか」
 姫条が首を横へ振る。
「ちゃうな。俺が喋らへんのやない、お前がよう喋っとるだけや」
 何故そうなのか自分では解らない。だが、無意識にギクリとした。
 返す言葉が見つからなくて、鈴鹿は視線を泳がせる。姫条は相変わらず涼しい顔で鈴鹿を見ていた。

◆◇◆◇◆

 ”困った”そんな顔をした悪友、鈴鹿和馬を姫条はじっと眺めた。
 
 母親の墓参りを終えて、帰ってきた学園は相変わらずだった。良い意味でも悪い意味でも。
 美奈子は鈴鹿に告白、もしくは真相なりを伝えていると思っていた。が、どうやら鈴鹿は姫条と美奈子は両想いだと未だに勘違いしているらしい。
 電話口の間抜けな言葉に心底驚いたが、考えてみれば文化祭も学校のなかでさえ鈴鹿と美奈子が一緒に行動している姿をみかけなかった。だからこそ、心配になって電話をかけたわけでもあるのだが。
 そういう可能性は零でなかった。
 ”少し……考えたいの”
 別れ際の美奈子の顔を思い出す。涙をためた目で俯いていた。
 ――これが考えて出した結論なん?
 問いかけても答は返ってこない。だが、訊くまでもないのだろう。夏から何も伝えなかったのだ、つまりはそういうことなのだ。
 だが、これでいいのだろうか?
 鈴鹿を自宅へ呼んだのは、そんな湧き上がる想いにかきたてられたからだ。理由は解らない。ただ、これがハッピーエンドではないということだけ理解した。
 いつもより饒舌な鈴鹿。黙ったままの美奈子。
 大方、互いが互いで現状に納得しているのだ。だから、動こうとしない。もしかしたら、こんな考えは余計なおせっかいかもしれない。
 ――いやいや。
 姫条はコーヒーに口をつけた。苦味が口の中に広がって、それでも名残惜しい香りを残す。恋は甘酸っぱいというが、本当はコーヒーのようじゃないかと馬鹿みたいに考えた。これじゃ恋する乙女だ。
 姫条が顔をしかめると、鈴鹿はうかがうような顔をする。
「濃くいれすぎただけや」
 にへらと笑う。いいかげん踏んぎりつけないとと、姫条はコーヒーを端に置くと細く長い息を吐きだした。肺にたまった全てを吐き出すと、唾を飲みこみ鈴鹿の目を見た。
「――美奈子ちゃんには会ってへん。今日も、今日だけやない夏から、ずっと――」
 大きく見開かれていく鈴鹿の双眸が姫条の姿を映している。今にも噛みつきそうな勢いで鈴鹿が身を乗りだした。
「な、どういう」
「その前に」
 姫条は言葉の先を制した。
「聞きたいことがあるんや」
 鈴鹿の態度で丸解りなそれをどうしても口から聞きたい。何となく勘づいてはいたものの、思えば言葉にして聞いたことがなかった。
 男同士で(しかも鈴鹿と)恋愛相談なんて、あんまりにもあんまりで想像なんてできやしない。だが、言葉にするのは重要で口にしなければそれが形にならないことを姫条はつい最近知ったばかりだ。
 形にならないあやふやのもののために動くんじゃない。確かなもののために姫条は動きたかった。
 鈴鹿はいいやつだ。美奈子は初めて幸せにしたいと思えた人だ。余計なおっせかいでも結末はハッピーエンドがいい。
「……美奈子ちゃんのこと、どう思っとる?」
「どうって」
 鈴鹿の目から勢いが一気に萎む。うろたえたように視線を横へ流す。
「友達だぜ――、前も今もな」
「そうやない。お前の気持ちや」
 鈴鹿は息を呑んで吐き出す。それから、姫条へ顔を向けて笑った。
「意味わかんねぇな。美奈子は良い奴で、だから友達なんだろ。何が違うんだ?」
「嘘や。ほんまは友達なんて思うてへんくせに」
 ぴしゃりと言い捨てると、鈴鹿の顔が強張った。
「好きなんやろ? 友達とは別の意味で」
「ちが――」
 言葉は続かない。鈴鹿は黙りこくって俯いた。わずかに肩が震えている。しばらくして、鈴鹿は寂しそうに呟いた。
「なんでだよ。姫条とも、美奈子とも友達でいいじゃねぇか」
 鈴鹿は言葉にしてしまうのを本能的に怖がっているのかもしれない――そう感じた。
「――いや、いいぜ。どうせ、バレバレだったんだしな。……そうだよ。認める、俺は美奈子のことが好きだ。まだ諦めきれてねぇ。だけどな、姫条と美奈子の邪魔はしねぇつもりだ。時間はかかっちまうかもしれねぇけどちゃんとケジメはつける」
 鈴鹿は自嘲気味に微笑むと、あっと小さく声をあげた。
「何で夏からあってねぇんだ。美奈子は留学すんだっつってたんだぜ!?」
「美奈子ちゃんが留学やって?」
「その顔はやっぱ知らなかったのかよ。あいつ、やっぱ全部一人で――あの馬鹿」
 ブツブツと文句を言っている鈴鹿の姿を見て、姫条はぷっと噴きだした。
 ケタケタと笑いだした姫条に鈴鹿は口を尖らした。
「なに笑ってやがる。お前のことだろ?」
「すまんすまん。つい」
 姫条は笑いすぎて目尻にたまった涙を指で拭う。
「確かに美奈子ちゃんが留学するいうてんのは初耳やし驚いたで。せやけど、それより驚いたんは和馬の察しの悪さや。よう考えてみぃ何で夏から会ってへんのか」
「――?」
「ふられたんや。盛大にな」
「お、……おぉ?」
 鈴鹿はどうやら物事が上手く呑みこめないようで何度も首を捻る。鈴鹿の完全な理解を待たないまま姫条は口を開いた。