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高校生

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 週の終わり、金曜日の放課後。下駄箱の中に淡い水色の封筒を見つけた。
 宛名も差出人の名前もないが、女の子の好きそうなデザインのそれは間違いなく
「入学早々ラブレターか」
 背後からにゅっと顔を出した鷹匠さんが冷やかしのコメントと共に尻に膝蹴りをくれる。
「わっ!何すか、鷹匠さんだってこういうのもらってンでしょ?」
 お互い様と思ってからかいっこなしにして欲しい。
 そう思って当たり前のように言ったのに、鷹匠さんはあからさまに不機嫌そうな顔になってしまった。
「もらってるように見えるのか?」
 去年のサッカー部で一年生ながらにレギュラーを張っていて、長身で男前。
 それに、彼のクラスが体育でグラウンドにいると一部の女子が窓際でそれを眺めている。彼女たちが鷹匠さんの名前を呼んでいるのを聞いたわけじゃないが、あれは鷹匠さんをみていたのだ。
 彼女たちの横から顔を出してみていると、気づいた彼が呼びかけてくる。手を振り返す。そうすると彼女たちは恥ずかしげに引っ込んでしまう。
 だから疑ったこともなかった。
「タカは愛想なくて怖がられてるからサッパリだよな」
 後から来た二年の早瀬さんが笑いながら教えてくれる。
 ますます鷹匠さんの機嫌は悪くなるが、そこは同じ二年生。振り回された足もサッとかわして追い越していく。
「あー…。鷹匠さんは、影からそっと見守りたい、ってタイプつうか…」
「下手なフォローすんじゃねえ。ムカつく。」
 もう一発尻を蹴ってさっさと玄関を出て行った。
 本当はそんなに気にしているわけでもないだろうが、手が出るのが早いのだ。
 急いで靴を履き替えてその後を追いかけた。
 手紙は仕方が無いのでブレザーのポケットに押し込んだ。
「ホントに意外だったんすよ」
「お前に言われても嫌味にしか聞こえねえよ」
 言いながらも足を緩めてくれた。並んで校門を出る。
 一緒に下校する距離はあと少しだ。
 示し合わせたわけではないが、距離を惜しむようにゆっくり歩いた。
「うちのクラスの女子にも鷹匠さんのファンぽい子いるンすよ」
「知ってる。わざわざその横から顔出したろ」
「わざわざって、別に俺の席ちょうどあの辺の窓際だったってだけで…」
 でも、少しだけ気分が良かったのは本当だ。ああいうのを優越感ていうのかもしれない。
 女子と張り合うわけじゃないけれど。
 あの時ほんの少しいい気分だったのは。
 指摘されるとなんだかズルイことをしたような気になってきて、ドキッとした。
 更に足が重くなる俺の一歩前で鷹匠さんは足を止めて振り返る。
「お前も………」
 その先は言わなかった。聞き返しても「何でもない」で押し切られた。
 いつもクッと顔を上げて歩く人が少しだけ下を見て歩いて、通学路はそこで別れた。

作品名:高校生 作家名:3丁目