新 三匹の子豚Ⅲ
「それが……驚いたことに三日月のトラの首には、真珠のネックレスがくるりと巻かれておったんじゃそうな」
「ええーっ! それってもしかして……」
三匹が驚きの声を上げると、それに被せるようにヒヒじいさんが言いました。
「そうなんじゃ。わしらも、もしかしたらトンコ婆さんの真珠じゃないかと思ってのう」
「きっとそうだよ! 間違いないよ」
ウーがいきり立ってカンガルーのおばさんに詰め寄ります。
「で、どこに今そのトラはいるの?」
「うーん、どうだろうねえ。まだあそこにいるかどうか……」
「そいつがトンコ婆さんを殺したに違いないんだ!」
「そうなんだってねえ。あたしゃあ、しばらく隣りの村に行ってたから、ちっとも知らなくって、さっきこっちに帰ってきてから、三日月のトラの話をしてて初めて知ったんだよ。トンコ婆さん可哀想なことをしたねえ。本当に……」
「うん。僕たち必ず犯人を見つけるって決めてたんだ。ウルフルくんのためにも」
「ああ、そうなんだってねえ。でも、これで彼の濡れ衣は晴れたんじゃないのかい?」
カンガルーのおばさんはそう言ったけど、ウーはどうしてもそのトラを許せません。
「僕、どうしてもあのネックレスを取り返したいんだ。ウルフルくんの濡れ衣は晴れたかもしれないけど、トンタおじさんの悔しさを考えると、やはり放ってはおけないよ」
「だけど、あのトラに近付くのは危険じゃ。絶対にやめた方がいい」
ヒヒじいさんが心配してそう言ってくれました。
その後ウーは、一人でトンタの家に行きました。そして、カンガルーのおばさんから聞いた三日月のトラの話をしました。
本当の犯人が分かった以上、ウルフルに対してお詫びを言って欲しかったのです。
傷ついたウルフルのことを考えると、トンタには是非そうして欲しかったのです。
ところが意外なことにトンタはこう言いました。
「そんなこと分からないじゃないか! もしかしたらその三日月のトラは、ネックレスを拾っただけなのかも知れないだろう? まだ、ウルフルが犯人じゃないと決まった訳じゃないさ。だから、おらは謝らない」
「そうかあ……」
トンタの言うことにも一理あると思ったウーは、その場は仕方なく帰ることにしました。