新 三匹の子豚Ⅲ
翌朝、三匹が朝早くからの畑仕事を済ませて帰って来ると、自宅近くに村の仲間が数人固まって、何やら話をしています。
「どうかしたのかい?」
ブーが声を掛けました。
すると輪の中心にいたカンガルーのおばさんが言いました。
「いやねぇ、隣の村へ行ってきたんだけど、帰りに森の出口の所に三日月のトラがいたんだよ。あたしゃあ怖くてね、急いでそばをそうーっとすり抜けて来たんだけどね……」
「へえー、三日月のトラ?」
フーが思わず口を挟みました。
「お前たちは知らないかもしれないが、三日月のトラというのはな、眉間に三日月の傷のあるトラでな、昔からあの森に住んではいるんじゃが、とても凶暴な奴なんじゃ。だからその姿を見るだけで、みんなすぐに逃げるようにしていたんじゃ」
「ふうーん、そうなんだ」三匹が頷きます。
「しかし、最近はあまり姿を見ることもなかったから、てっきりどこか他所へでも行ったのかと思っておったんじゃが……」
輪の中にいた長老のヒヒじいさんがそう話してくれました。
「そうなんよ。だから、まさかその三日月のトラに出くわすなんて思ってなくて……。どんだけ驚いたか――」
カンガルーのおばさんは胸に手を当て、大きく息を吐き出しました。
「それでみんなで話してたんですか?」
ウーが尋ねました。
「違うのよ。それもそうなんだけど、それだけじゃないの!」
「カンガルーのおばさん、それってどういうことなんですか?」
今度はブーが尋ねました。
「それがね、その三日月のトラの首に何が付いてたと思う?」
「えっ? 一体何が?」
三匹が声を揃えて言いました。
「それがな、びっくりするんじゃないぞ」
ヒヒじいさんが、何やら期待を持たせるように言うんです。
三匹は思わず唾を飲み込んで、ヒヒじいさんの次の言葉を待ちました。
「わしらもさっきカンガルーのおばさんからそれを聞いて、びっくりしたんじゃ」
「……」
三匹は早く続きを聞きたくて黙っていました。