新 三匹の子豚Ⅲ
「おらも行くぞ。お袋を殺したのが奴なのかどうか、きっちり自分の耳で聞かなきゃならねえ。そうだろ?」
ウーは少しの間躊躇していましたが、ダメだと言ってもきっと二人とも聞かないだろうと思ったので、渋々承知しました。
ウーを筆頭に三匹は並んで歩いて行きました。そして三日月のトラから五メートルくらい手前で足を止めました。
だってあんまり近づいて、いきなり飛びかかって来られたら一巻の終わりですもんね。それに三匹だって本当は怖いんです。
だから自然に、誰が言ったわけでもないのに揃って足を止めてしまったのです。
しばらくその場にじっと立ったまま、トラの様子を見ておりました。
そんな三匹を、村のみんなは後方の木の陰から不安気に見守っています。
少しすると、トラがうーんと身体を伸ばしました。
いよいよ目覚めるのか――そう思った三匹の顔に緊張が走りました。
もし三日月のトラがいきなり駆け出してこちらに向かって来たら、とても逃げおうせそうにはありません。
無意識にも僅かに身体が震えてくるのを感じていました。そんな時です。
三日月のトラが、重そうに頭を上げてこちらを見たのです。
その首には、トンコ婆さんの大切にしていた真珠のネックレスが嵌っています。少し苦しそうに見えるほど、それは首の付け根に食い込んでいました。
「なんだお前ら……」
トラが野太い声を発しました。
「俺さまに何か用か」
そう言うと三匹をギロッと睨みました。
思わず三匹はごくりと唾を飲み込んだまま、返事ができないでいました。しかしいつまでも黙っているわけにはいきません。
意を決してウーが話し掛けました。もちろんトラを怒らせないように慎重に言葉を選んで――。
「三日月のトラさん、おやすみのところを邪魔してごめんなさい。実はちょっとお尋ねしたいことがあるんですが……」
「うん? 俺様に聞きたいこと? 一体なんだ」
「それがそのう……トラさんが首につけてるネックレスのことなんですが……」
「ああ、この真珠のネックレスのことか。これがどうした?」