新 三匹の子豚Ⅲ
「その笑い、僕たちには何もできないとでも思ってるんですか?」
ついウーもむきになってしまいました。
「アハハハ」
トラはさもおかしそうに笑うと、
「このネックレスはなあ、あのばばあから俺様がもらったんだぞ」と、思いもかけないことを言いました。
「そんなはずあるもんか! お袋はそれを家宝だと言ってとても大事にしてたんだ。お前なんかにやるわけがない!」
トンタが叫ぶように言いました。
「ふふっ、じゃあ本当のことを話してやろう」
そう言うとトラは、その日のことを話し始めました。
「あの日、俺様が今日みたいにここで微睡んでいる時のことだった。あのばばあが俺様の横をすり抜けようとした。それに気付いた俺様は、ばばあを呼び止めたんだ」
「おい、ばばあ。ちょっと待てよ」
トラの横をそうーっとすり抜けようとしたトンコ婆さんは、その声にビクッとして立ち止まったのです。しかし振り向くのも怖くてじっとしていました。
「おい、声を掛けてるんだぞ。こっちを向けよ!」
そうまで言われたら振り向かない訳にもいきません。仕方なくトンコ婆さんは後ろを振り向きました。
「おい、お前の首に光ってるのは何だ?」
いきなりトラはトンコ婆さんにそう聞いてきました。
「こ、これは家宝の真珠のネックレスです」
トンコ婆さんは辛うじて声を出しました。
「へえー、それが真珠というやつか。初めて見たがなかなか綺麗じゃないか。それを俺様に差し出せ」
「えぇーっ、それだけはできません。これは私の命よりも大切なものなんですから」
「ほほう、命より、と……じゃあ俺様にその命を取られてもいいんだな?」
「い、いえ、そういう意味じゃ……」
トンコ婆さんはそう答えながら、何とか逃げる方法はないかと考えていました。
「そういう意味じゃなければどういう意味だよ。いいから素直に俺様に差し出せばいいんだよ!」
「でも、それは……」
それでも渋るトンコ婆さんの態度に、トラは次第に苛立ちを覚えていきました。