新 三匹の子豚Ⅲ
トラの話を聞き終わった三匹たちは、その話がまんざら嘘だとも思えませんでした。
そうは言っても、だからと言って許せる話でもありません。
トラが話し終わっても、しばらく誰も何も言えないでいました。
ところが、沈黙の中からいきなりトンタが駆け出したのです。トラを目がけ、斧を振り上げ「お袋の敵ーー!」と叫びながら……。
トラはもちろんすっくと立ち上がり、その前足に力を込めて、今にも飛び掛かろうとする体勢をとったのです。
「あ! 危ない」
ウーがそう思うのと同時に、「わあーー!!」っと言う喚声と共に、ドドドドッという足音が響いたのです。
そうです。背後の木の陰に隠れて見ていた村の仲間たちが、鍬や斧を振り上げ一斉にトンタの後に続いたのです。
それを見たトラはさすがに驚いたのか、一瞬ひるんだように見えました。その時です。
「みんなやめてーー!!」
ウーが精一杯の声を張り上げました。
その声に驚いて、みんなの動きが止まりましたが、トンタはすでにトラの目と鼻の先まで迫っていました。
みんなをかき分けてトラの前まで進み出ると、ウーは三日月のトラに向かって言いました。
「トラさん、本当のことを話してくれてありがとう。僕たち動物には、それぞれに生まれた時から刻まれている本能ってものがある。僕たちは野菜を育てて食べればいいけど、トラさんは肉食だから、誰かを襲って食べるのは仕方ないことだと思う。ただ、今回その相手が僕たちのトンコ婆さんだったのは、とても悲しいことだけど……」
そこまで言うとウーはちょっと俯きました。そして右手でそっと頬に零れるものを拭い、もう一度トラをしっかり見据えると、また言葉をつないだのです。