新 三匹の子豚Ⅲ
そんなやり取りを、そばで三匹の子豚たちはじっと見ていました。
「もしかしたら本当にウルフルくんがやったのかも……」
ブーは、そう思っていました。
「でも本当にウルフルくんがやったんだろうか?」
フーはそう思っていました。
「そんなはずはないよ。ウルフルくんがそんなことするはずない!」
ウーだけはそう信じていました。
三匹はそれぞれに心の中で色々思ってはいましたが、みんなの剥きだしの敵意のような言葉を聞くと、口を挟めなくて黙っていました。
そしてついに、みんなの責めに耐えられなくなったウルフルは、
「俺はやってないんだーー!」
と叫ぶと、泣きながら家を飛び出していってしまいました。
その後もしばらく、みんなはトンコ婆さんを殺した犯人のことであれこれ話していましたが、やがて葬儀が終わると、それぞれに自分の家に帰りました。
三匹の子豚たちも家に帰りましたが、みんな気分が沈んでしまって、誰も何も言おうともしません。思い思いの椅子に掛けて、何やら考え込んでいるようです。
しばらくして、沈黙を破るようにウーが口を開きました。
「ねえ兄さんたち、どう思う?」
ブーとフーが驚いたように顔を上げてウーを見ます。
「ウルフルくんのことなんだけど……」
ウーが何を言いだすのかと、ブーとフーがじっと見つめます。
「あのね、みんなはあんな風に言ってたけど、僕はウルフルくんはやってないと思うんだ」
ブーもフーも何と答えようかと考えているようです。
「だってさ、あの時、トンコ婆さんのことを知らせに走って来た時のこと、よく思い出してみてよ」
「うーん。確かすごく息を切らせてたよなぁ」
ブーが言いました。
「うん、そうそう。あの時、ウルフルくん、くたびれ果てて座り込んだんだったよね」
フーが言いました。
「そうだよ。あれがお芝居だと思える?」
「うーん、そうだなあ……」
ブーとフーが腕組みして考え込みました。
「あれは絶対お芝居なんかじゃないよ! 彼は本当に早く知らせようと必死で走って来たんだよ。だから僕はみんながなんと言っても彼を信じるよ。兄さんたちも信じるよね?」
「うーん、でもなぁ……」
「なんと言っても前科者だし……」
ブーもフーもはっきりしません。
「もう! 兄さんたち、最近はあんなに仲良くしてたのに、彼のことが信じられないの?!」
ウーは語気も荒くそう言うと、
「もういいよ! 僕一人だけでも彼を信じるから。ちょっとウルフルくんのうちに行って来るよ」
「えっ、今からかい?」
「今からじゃ暗くなっちゃうぞ!」
ブーとフーはそう言って、出て行こうとするウーを引き止めました。しかし、それを振り切ってウーは出掛けてしまいました。
ウーは、あの時泣いていたウルフルが心配でならなかったのです。