新 三匹の子豚Ⅲ
ウルフルは何も言いません。ただ俯いてウーの言葉をじっと聞いています。
「僕の気持ち、信じてくれるかな?」
いくら言ってもウルフルがひと言も口を利かないので、じっと黙ってウーが見ていると、膝の上に置いていたウルフルの手の甲に、何やら雫がぽとりと落ちてきました。
「えっ」と思ってると、それは一つが三つになり、ついにはポタポタと止めどなく零れてきました。
ウルフルが涙を流しているのです。
それを見たウーの胸がキュンと熱くなりました。思わずソファーから立ち上がると、急いで傍に寄り、涙に濡れたウルフルの手を自分の両手で包むように持ちました。そっと。
すると、ウルフルの口から嗚咽が漏れ始めました。
「ううっ……」
堪らずウーは、ウルフルの頭を自分の胸に抱きしめました。
「ウルフルくん、辛かったよねえ。ごめんねえ」
優しくそう言いながら……。
しばらくウーの胸で泣いていたウルフルがようやく顔を上げると、涙声で言いました。
「俺、悲しくって、悔しくって……だって、もう悪いことはしないと決めてたのに……。そう思って一生懸命やってたのに……。なのにあんなこと言われて……俺、おれ……」
「もういいんだよ、ウルフルくん。誰がなんと言っても、僕だけは君の無実を信じてるから。僕はいつだって君の味方だからね」
ウーがそう言うと、また一際高い声でウルフルが泣きました。そして、涙と鼻水にまみれた顔を手で拭い、胸の中から搾り出すように、囁くような声で言いました。
「ありがとう。ウー。本当にありがとう」
「ううん、いいんだ。だって僕たちは友達だもん」
「友達?……うん、ウーは本当の俺の友達だ」
二匹はじっと互いを見つめ微笑み合いました。
「そうだ! 僕、明日から本当の犯人を捜すよ。そして、君の無実を証明するんだ」
ウーは目標が見出せた喜びに目を輝かせ、
「そうだよ。絶対に見つけてやる!」
そう言いながら、自分の両手をぎゅっと握り締めました。
その後、どうやって犯人を見つけるかについてしばらく話した後、また暗い道を一人でウーは帰って行きました。
その後姿に「気を付けてね」と言いながら、心配そうにウルフルがいつまでも見送っていました。