BOKORI TITLE 10
11:マウントポジション
これ程、深く何かを憎悪することはない。そう雲雀は震える手で顔を覆う。彼は魂のそこからこみあげる恐怖に飲み込まれかけていた。身体は、寝台の上にあり、柔らかく支えられているというのに。まるでそこが抜けるような。そして落ちていくような。
雲雀はカタカタ震える。彼をここまで恐慌状態に陥れたもの。それは。
「さわだっ、つなよし……!」
沢田へ夜這いをかけに来た寝室。人が寝ているように錯覚させた、わざとらしいクッションの山と思われるもので膨れた上掛け。
たまには子供騙しにのってやるかと、膨れた上掛けの上、マウントポジションをとった。
その足のあいだ。
クッションの山かと思ったそれは抱き枕で。
口にするのもおぞましい南国果実の全裸とおもわれる等身大、のあ、ああああああっ!
「ころすっ…!」
もはや怒りのあまり涙目。なんていうひどい仕打ちなのか、いくらこちらが普段から好き勝手しているからとはいえ、これは酷すぎる。裏切りだ。雲雀は最悪のマウントポジションを維持しながら決意する。
使い物にならなくなるくらい、抱き殺そう。
でなければもう、立ち直れそうにない。
作品名:BOKORI TITLE 10 作家名:夕凪