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みっふー♪
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novelistID. 21864
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ワンルーム☆パラダイス

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〜予め失われた差し入れ〜

月明かりの下、オールカラー(※ヒント:大概写真の見本通りには出来上がらない)のずっしり重いレシピブックを眺めるツッキーおねいさんの眼差しは、今にも冊子を突き破らんばかりのクナイの鋭い磨き上がりっぷりに劣らず真剣でした。
「……ヨシこれにしよう、」
はにかみに頬を染めつつ、おねいさんはびっしとページを指差し確認して言いました。

おねいさんチョイス
・シュヴァルツヴァルダーキルシュトルテ
・サバラン
・わっふるわっふる()←これは間違い
・ウィスキーボンボンe.t.c.

おねいさんはいじましい乙女心を発揮して、連日せっせと差し入れ作りに励みました。が、しかし、
「ヘンじゃな、どうも毎回途中で記憶が……」
ズキズキガンガンする頭を押さえて、――ひっく、ツッキーおねいさんはほろ酔い(?)上等、赤ら顔に呟きました。
「差し入れする気ねーだろがァァ!!!」
なぜかクナイでド突き回されたらしき傷跡でボロボロの天パが喚きました。おわり☆



〜非情の団子ノワール〜

とある新月の晩のこと、ぼんやり月の裏側を想像していた少女は唐突に思い立った。
――そうだお団子作ろう!
団子と言っても少女のイカす髪型のことでも日頃彼女がおすなばで泥だらけになってこしらえているカッチカチの造形物のことでもない。お米の粉とあんこでできたモッチモチの、ひとくち食べれば頬が落ちそうにあまぁい団子だ。
少女はさっそく台所の戸棚から団子の粉を出してきて袋の裏の作り方通りに作業を進めた。
ぼうるに粉を入れて水を入れてねりねりねりねり、耳たぶくらいの固さになったら丸めて茹でて串に刺して、買い置きの缶詰めあんこをからめてさぁ出来上が……、
「!」
そのとき、不意に台所の電気が消えて辺りが真っ暗になった。
「……んもー、」
少女は憤慨したが、電力供給逼迫の折、子供じみた不平を述べても致し方ないことである、少女はおとなしく復旧を待った。幸い、ものの数分で明かりはついた。
「……、」
――さぁって夜中のお団子ひとりでぜーんぶたーべよっ!
新月祭りのモチ踊りの月のうさぎと同じ浮かれ気分で手にした皿を見て少女は驚愕した。
なんと、皿の上の団子が一串残らず消えていたのだ。
「!!」
――だっダレがいったいこんなエゲツない真似を、少女の中で揺るぎない正義の心がムクムクと頭をもたげた。
「銀ちゃん!」
少女は就寝中の同居人のおっさんの部屋に駆け込み訴えた。
「起きて大変ドロボウだよ! 私のお団子ドロボウ!!」
「……夜中に何騒いでんだよ」
天パおじさんは肩を竦めて面倒臭そうに布団の中に潜り込もうとした。少女は問答無用で掛け布団をひっぺがし、鼻息も荒く事件の概要を語った。
「……」
起き上がった天パはパジャマ姿に寝癖を掻いて言った。
「オマエ口の周りおもっきしアンコ付いてんぞ、」
「こっ、これはその、たまたま味見したときに……」
口を覆って少女はもぞもぞ言い訳した。半眼の天パが言った。
「そんで何本味見したんだ?」
「……」
少女は両手の指を使って数え始めた。十本以上は数えられない。
「たくさん……」
頭を垂れて少女が答えた。
「皿に残った団子の串は?」
再び天パが訊ねた。――ひぃふうみぃ、十まで数えて少女は返した。
「たくさん、です……」
「ヨシわかった、犯人は無意識のオマエだ、」
天パは剥がされた布団をよいしょと被り直した。
「そんなーーーーー!!!!!」
――そんなはずないヨ! ぜったい私一人のしわざじゃないネ!! 合点がいかない少女が即行布団をひん剥いた。
「……」
天パは地蔵のような目で少女を見た。ぽんと手を打って少女が言った。
「そうだ銀ちゃんおもきし私を殴ってよ! そしたらしょっくで曖昧模糊な記憶がはっきりするハズだヨ!!」
「……」
結構な無茶であったが、卑近の安眠を得たいがために天パは深謀もなく少女の脳天にガスンと手刀をかました。
「痛ったァい!」
赤毛をさすさす少女が言った。
「ああっしまった間違えたっ! ぶつんじゃなくてアレお湯に放り込むんだった! 銀ちゃん私を熱っついお風呂にブッ込んでよ! そしたら、――くったくったくった、たぶん自分で自分にナットクするから!」
「…………」
いー加減にしろよメンドくせーなァァ、とは思ったものの、とにかく一刻も早く場を切り上げたい天パは、少女の要求通りあっつあつに沸かした風呂に身ぐるみ少女を放り込んだ。
「熱っちまじ熱っつ!」
「どーだ気ィ済んだか?」
滾った湯船の中でおぶおぶする少女を眺めながら戸口に凭れた天パが大欠伸していると、
「何やってんだいっ!」
玄関の戸がガラリと開いて、大家のまだむが深夜にガナリ込んできた。
「――!」
鬼の形相のまだむは地獄嶽から少女をひょいと摘み出し、用意してきた氷水を威勢よくぶっかけると、呆けている天パのパジャマの首根っこ掴んでガスガス容赦なく締め上げた。
「アンタ気は確かかいっ?! ヨソ様の大事なおじょーさん預かってどういう了見だいッ」
「――、」
天パは一言も発せずに目を白黒させているばかりである。
「ちっ、違うんですっ! 銀ちゃんは妥当に教育的指導してただけアル、悪いのは私の度を越したくいしんぼさんね!」
前髪に氷水を滴らせながら、――どうか勘弁したげてつかぁさい、アンコまみれの唇で少女はまだむに嘆願した。
「そっ、そうかい……?」
まだむは大分不本意そうではあったが、とりあえず天パを〆るのはミディアムレアくらいで止しにした。
ひとしきり説教述べてまだむが引き上げて行ったあと、ぐったりしている天パの口に皿に残ったあんこを塗り塗りしつつ少女が言った。
「ねー銀ちゃん本当のコト言ってよ、私のお団子食べたでショ?」
「……」
息も絶え絶え、天パは力なく頷きかけ……て全力で否定した。
「……。」
――すぅ、深呼吸した少女は、
「ま――……!」
階下に向けて大声を張りかけた。
「!!」
少女を制し、天パは必死の顔色に首を縦に振った。にっこり笑って少女が言った。
「んもー、言ってくれれば分けたげたのにぃ!」
――こんどから9:1でわけっこしようね! 少女は無邪気にはしゃいでみせた。
「……。」
……何がしたいんだこいつ、遠のいていく意識の中で天パはどんより思った。


〓了〓

〜ソーメン666〜

「……またですかぁ、」
昼、賄いに出てきた丼を見て少年がため息をついた。「朝昼晩+おやつに夜食、これで666食連続そうめんですよ」
「文句あるなら食うなよ」
箸を止めて半眼天パが凄んだ。
「腹に入れば皆同じね!」
自分の分を既に空にした少女が少年の丼に手をかけた。
「せめて明日はそーめんチャンプルにしましょうよ、」
肘で囲んで丼を死守しながら少年が言った。
「私にゅうめん!」
隙をついて脇から箸で手繰ろうと少女が身を乗り出す。
「ソーメンの両面カリッカリに焼いてな、はちみつメープルドバーッで食うのも乙なもんだぞ、」
ぶっかけソーメン丼に残った汁を啜って天パが言った。
「……。」
少女と少年は揃って微妙な顔をした。――わふっ! 背後でわんこが吠えた。
「わうっわうっ!!」