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ミニ☆ドラ

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2章 かわいそうなシンデレラ?



「本当に、物語通りだな……」
感心した声が耳元に届く。

「いったい、何がだよ!?」
イライラとハリーはクリスマスのあとの大量の汚れた皿を洗いながら答えた。
「いやー、本当に君は、物語で読んだシンデレラと同じなんだなーと思って……」
「――うるさいっ!!!」
思わず自分の肩に乗っていた相手を、泡だらけの手で叩き落とそうとした。

しかし身軽な魔法使いはくるりと一回転をして、蛇口の上にふわりと着地すると、相手を見上げてニヤニヤ笑う。
「まま母みたいなのに苛められて、本当にかわいそうな、シンデレラ」
その小ばかにした態度に危うくハリーは怒りのあまり、手に持った皿をたたき落としそうになった。

「もう一度、言ってみろ!!今度言ったら、片手で捻り潰すからなっ!!」
「あー、怖い怖い……」と大げさに肩をすくめてドラコは、銀色の蛇口の上に座って足をぶらぶらさせる。

ハリーはわざと蛇口を大きく開いて、水道の水を相手に容赦なく浴びせかけた。
一瞬にして、彼はずぶぬれになる。
「――ぎゃーっ!冷たいじゃないか!!」
「ああ、悪い、悪い。手が滑っちゃったのかなぁ~」
意地悪くハリーは、「フフン」と笑った。

ふて腐れたままそのチビっこい魔法使いは、ステンレスの流しの隅に立つと、ベタベタになったマントと帽子を脱いだ。
隣にあるタオルにもぐりこみ、濡れたシャツなどを擦り付けて、乾かそうとする。

「デリケートな僕が風邪を引いたら、どうしてくれるんだ。まったく!!」
「風邪引いても、君は自称魔法使いだろ?魔法ではぱっと病気を治したり、服を乾かしたりしたらいいじゃないか」
「出来るわけないだろっ!!」
不機嫌なままドラコは答えた。

「じゃあ、やっぱり君は偽者なんだ」
「なんだとー!僕は本物の魔法使いだ!マルフォイ家の立派な跡取りだ!バカにするな!!」
「でも、魔法使えないくせに」
さらりとハリーは嫌味で応戦する。フンとドラコは鼻息も荒く、腕を組んで相手をじろっと睨みつけた。

「ああ、確かに使えないさ。使えないとも!魔法は自分のためには使えないようになっているんだ。最初っから、分かりきったことだろ!ジョーシキだ」
「そんな変なルールなんか、僕が知るわけないだろ」

「占い師と同じだよ。自分の利益になることには、使えないんだ。それだったら、自分で自分に「幸せになれますように」ってお願いすれば、何もしなくもよくなるだろ。そんなに簡単な人生なんか、この世にあるもんか!これだから、マグルは……」
ぶつぶつ口の中でなにやら愚痴って、濡れた髪をまたタオルにこすりつけた。

「……じゃあさ、僕の動きを30分だけ早送りのように、高速で動けるようにして、この皿洗いをさっさと片付けるっていうのは、どう?」
「出来ませーん!」
あっさりと魔法使いは答えた。

「――時間を縮めたり、動作を早くしたりする、自然界の定義をゆがめることは、魔法では一切出来ませーん!ついでに僕の魔法は、1日1回限りでーす!さっきのローストチキンの件で終了でーすっ!はい、残念でしたーっ!」
ハリーはムカムカしてきた。

(……やっぱりこいつ、明日の朝には二階からたたき出してやる!)と苦々しく決意する。

「……でも、まぁ、少しはお前の望みも叶えてやろう」
えへん!と、かしこまって、魔法使いはタオルの中から這い出てきた。

まだイヤになるくらい汚れた皿が乗っているテーブルを、ちょこまかと右へ左へと動きまわりつつ、デザート用の小さめのフォークを持つと、洗ってきれいになったばかりの1枚の皿の上に、手が付けられていない残り物を手際よく運び始めた。

サラダに、ローストに、ポテトなどを、いろいろな皿から寄せ集めてきて、ものの数分もしないうちに、皿にはいろんな物で山盛りになった。
出来上がったものを見て、ハリーは感嘆の口笛を吹く。
とてもその皿に乗っているのは、残り物とは思えないほど、きれいに盛り付けられているからだ。

小さな魔法使いは、自慢げにエヘヘと笑った。
「どーだ、うまそうだろ?僕だって、やれば出来るんだ!」
などと小さな胸を反らせる。

「別に威張るほどのものじゃないけどね」
今までのこともあり素直に褒めない相手に、ドラコはムッと唇を尖らせた。

「なんだによ、その言い草は!せっかくこの僕がわざわざ盛り付けてやったのに。――いいか、僕をどこの誰だと思っているんだ?」
「はいはい、マルフォイ家でしたっけ?」
そうだとばかりに偉そうにうなずく相手に、ハリーは軽く指先でやや広めのおでこを小突いた。

「――い……って!!」
ドラコは大げさに叫ぶ。

ハリーは屈みこんで、テーブルにいる相手と視線を合わせた。
「血統か家柄かどうかは知らないけど、そんなことで威張るな。そんなの、たまたま生まれついたときに、偶然手に入ったものだろ。下らない!君は一切何も努力してないじゃないか」
鋭く突かれて、魔法使いは少しだけ肩を落としてうつむき無言になってしまった。

微妙な居心地の雰囲気が漂い、ハリーも少し言い過ぎたと反省したらしい。
咳払いをひとつすると、いくぶん声のトーンを上げて柔らかい声で話しかけた。

「君、名前は?名前はなんていうの?」
「――えっ?」
「名前だよ。な・ま・え」
「…… ドラコ」
ぼそりと小さな声でつぶやく。

「なに?よく聞こえないけど、マルコっていうの?」
「―― ドラコだっ!間違えるなっ!」
名前を間違えられてカッときたのか、本来の威勢のよさが戻ってくる。

「じゃあ、 ドラコ。君に礼を言うよ。マルフォイ家じゃなく、君自身にね。おいしそうに盛り付けてくれて、ありがとう」
その言葉を聞いた途端、魔法使いの顔はパッと輝くように明るくなった。
今にも飛び上がらんばかりに、嬉しさを表現する。

あのひん曲がったプライドが高そうな彼が、こんなにも喜ぶとは思っていなかったので、ハリーはちょっと面食らったように瞬きをした。
「……もしかして、君は僕に褒められて、嬉しいの?」
金髪の髪の毛を振り乱さんばかりに、うんうんとうなずく。

「初めて、人間に褒められたとか?」
そうそうと頭を縦に振る。
「だって、僕は魔法で褒められたことが、一度もないから……」
「――えっ!今、君は、魔法なんか使っていなけど?」
(はっ、そうだった)と気づき、魔法使いはがっくりとうな垂れる。

それに何かイヤな言葉も、ポロッと漏らしたような……?

「魔法で褒められたことがないって、どういう意味?」
「――何のことかなー……」
さりげなく視線を外し、「空耳だろ!」取ってつけたような張り付いた笑顔をみせる。

絶対に大事な何かを隠しているとハリーは思ったけれど、それ以上追求することはやめた。
(……まあ今夜はクリスマスだし、相手は明日になったら追い出すし、言い争っても仕方ないや)
ハリーは目の前の椅子を引いて座った。

前掛けのエプロンを外して、隣の椅子に乗せる。
「とりあえず、君の作ってくれた、スペシャルディナーをいただこうとしよう」
ナイフとフォークを手に取る。

「……じゃあここは一つ、僕はあのミネラルウォーターでも持ってくるよ」
作品名:ミニ☆ドラ 作家名:sabure