ミニ☆ドラ
機転を利かせて魔法使いは、テーブルの向こうの端にあったグラスを抱え上げようとする。
それが危なっかしく揺れて、前に倒れそうになった。
「――まて!それは僕が持つから、止めてくれ!こぼしてまた僕の仕事を増やす気か」
あっさりと水はすぐにハリーの手に移った。
くしゃくしゃに丸められたナプキンの上に、魔法使いはちょこんと座ってため息をついた。
「……僕はやっぱり……何も――できないんだ」
その落ち込みかたがあまりにも大げさだったので、ハリーは思わず噴出しそうになった。
「そんなことはないって。こんなにもおいしそうなご馳走を用意してくれたじゃないか」
思わず慰めの言葉をハリーは柄にもなく言う。
「……僕は人の役に立つのだろうか?」
「そうだな、少なくとも僕には役に立っていると思うよ。一人で食事するより、誰か話し相手がいたほうが楽しいから」
「……つまり、魔法ではないわけだな……」
ハリーは肩をすくめる。
「気にするな。魔法は魔法だ。君が取った行動は魔法じゃないけど、かなりいい線いってたぞ」
ハリーの慰めの言葉に、ドラコは少しだけ笑った。
「――君は僕が今まで出合った中で一番性格が悪いけど、時々、とてもいいことを言うな……」
けなしているようにしか聞こえない返事を返されて、ハリーはまた不機嫌になった。
(……こいつは口の利き方を本当に知らない奴だ。相当甘やかされて育った、お坊ちゃん体質だ。……ったく!)
眉間にシワを寄せて舌打ちする。
(やはり明日の朝にはゴミとして、2階から放り投げてやる)と再度心に誓った。
――――ポンっ!
突然魔法使いの杖の先から、小さな白い花がふわりと出てきた。
「パワー不足で大きな魔法はできないけど、ほんの小さな魔法なら、残ったエネルギーを集めて、なんとかなるんだ」
フフフ……とドラコは笑った。
「メリークリスマス、ハリー!――これは僕からのプレゼントだ!」
そう言って爪の先ほどもない小さな花を、ドラコは上機嫌でハリーの手のひらに乗せたのだった。